欧州は移民問題で「地獄に落ちる」と言ったトランプ氏…むしろ米国の状況が深刻化 内戦勃発の可能性は高まる一方
右派と左派両方の政治的暴力は激化か
米国では1960年代にも、公民権運動やベトナム戦争といった論点を巡って政治の二極化が生じた。だが、専門家は「(2020年代の二極化は)これをクリアすれば二極化が解決できるという具体的な論点がない」と指摘している。
「暴力の大半は左派から生まれる」というトランプ氏の主張も、的はずれではないようだ。9月22日付のウォールストリート・ジャーナルは、「米国では過去数十年間、右翼過激派やジハード(聖戦)主義者が国内テロの中心だったが、最近、明らかに左派的見解を持つ人物などの犯行が増えている」と報じた。
トランプ政権の独裁化が進む中、非暴力的手段では権力が取り戻せないと絶望した民主党支持者から過激分子が現れているということなのだろう。
今の米国は暴力的ポピュリズムの時代を迎えており、右派と左派の両方による政治的暴力がますます激化するのではないかと不安が頭をよぎる。
『アメリカは内戦に向かうのか』(東洋経済新報社)の著者で、カリフォルニア大学サンディエゴ校政治学教授のバーバラ・F・ウォルター氏は、「米国で内戦が起きる可能性はさらに高まっている」との認識を示している。ウォルター氏が想定する21世紀の内戦は、19世紀半ばに起きた正規軍の衝突ではなく、テロが全米各地で頻発し、米国のカントリーリスクが著しく悪化する状況だ。
カリブ海での麻薬密輸の取締りに躍起
状況の悪化は米国内にとどまらない。
米国務省は9月26日、南米コロンビアのペトロ大統領の入国査証(ビザ)を取り消すと発表した。国連総会に出席するためにニューヨークを訪れていたペトロ氏は同日、国連本部前で「米軍の兵士たちよ、トランプ氏の命令に従うな」と群衆に呼びかけていた。ペトロ氏は以前から、移民や麻薬密輸の問題でトランプ政権と対立していた。
トランプ政権はこのところ、カリブ海での麻薬密輸の取締りに躍起になっている。同月15日にベネズエラを「麻薬対策失敗国(過去1年間で麻薬対策協定の遵守に明らかに失敗した国)」に指定するやいなや、米軍による麻薬対策作戦を開始した。軍艦8隻と潜水艦1隻をカリブ海に派遣し、ベネズエラの麻薬密輸船とみられる少なくとも3隻を撃沈し、十数人を殺害している。
トランプ政権がベネズエラのマドゥロ大統領からの対話の呼びかけを拒否し、ベネズエラ国内の麻薬密輸組織を標的とした米軍の作戦を検討しているとの報道がある。トランプ氏はマドゥロ氏を“麻薬カルテルの首領”として糾弾しており、ベネズエラでレジーム・チェンジが起きる可能性すら出ている。
[2/3ページ]



