進次郎・高市出馬で見えた”自民分裂”の近未来 「石破おろし」に批判噴出の自民は「旧安倍派を断ち切るしかない」

国内 政治

  • ブックマーク

自民党は本当に与党でいたいのか

 石破政権は少数与党でありながら越年編成せずに予算を年内に成立させ、トランプ関税にも一定の決着をつけることができた。コメ価格にしても、備蓄米の放出という判断を下して現実的に値段を下げることに成功しています。これらの点は石破政権の評価できることではないでしょうか。

 石破首相は両院議員総会で「“石破らしさ”というものを失ってしまった」として謝罪をしていますが、菅政権のGoToトラベルや岸田政権の国葬などに比べて、石破首相は世論に反することは行っていない。石破首相は辞任発表の会見で「賛成はしていただけなくても納得していただける」と内閣支持率上昇の理由を語っていましたが、まさにそうした層に石破政権は支えられていたのだと思います。

 石破首相退陣に至るまでの動きを見ると、自民党は“与党の資格”を失いつつあることを強く感じさせられます。未解決のままである政治資金問題にも手を付けず、「石破を変えれば党のイメージは良くなるだろう」と安易に石破おろしに走る様子を見ると、党のガバナンスが働いているとは到底思えません。自民党は本当に与党でいたいと思っているのかと疑念を抱いてしまうほどです

 少数与党に転落して以来、石破政権は政策テーマごとにスタンスの違う野党と話し合って予算などを成立させてきました。自民党が少数与党として政権を運営していくには、今後、ある程度の幅をもって中長期的に与野党間で政策を協議していく与野党連絡会議のようなものが必要で、これは石破政権が実際にやろうとしていたことです。

 自民党に力のあった安倍政権時代では賛成か反対かで政策を進めていけば良かったかもしれません。しかし、自民党の力が弱まった今はこのようにはいかない。現実的に必要なのは与野党で協議を進めて妥協点を探ることであり、石破首相には現在の自民党のリーダーとして必要な資質が実は備わっていたのではないかと思うのです。

自民党が分裂する未来

 石破首相が辞任したことで、自民党の中には「これで禊は済んだ」と思っている議員も多い。ただ、1年で内閣を閉じさせてしまった以上、新たな首相の路線によってはまた試行錯誤をして政権運営をしていかなければならないということを忘れてはいけません。今のまとまりを欠いた自民党にとってこれは至難の業です。

 林氏が総裁になれば、石破首相の路線をある程度受け継いで政権を運営することが出来るはずなので“試行錯誤” の度合いは小さく済むかもしれませんが、それ以外の方が総裁になった時には政権運営のやり方に大きく手を入れることになるでしょう。

 例えば、茂木氏などは国民民主や維新との連立協議を目指すと言いますが、現実的に国民民主を支援する連合は黙っていないでしょうし、維新との連立は公明党が激しく反発します。まとまりを欠いて弱体化した自民党にこれを出来るかと言えば、まず難しい。

 そして、裏金議員であった旧安倍派への反発も根強い。総裁選で旧安倍派の一定数は高市氏を支援するはずですが、もし高市総裁が実現した場合には旧安倍派とそれに反発する議員で党内分裂はさらに進むでしょう。こうなると、高市氏に反発する野党と与党とりわけ公明党などが組み、自民党ではない内閣が成立する未来が見えてきます。

 自民党が国民からの信頼を取り戻し、大きな塊として政権与党であり続けるのであれば、どこかの段階で旧安倍派を断ち切り、政治資金規正法に手を入れるという荒療治をせざるを得ない。与党としてのガバナンスを失いこのまま弱体化を続けるのか、あるいは分裂覚悟で党内改革を行って求心力を回復するのか、総裁選は自民党の今後を占う大きな分かれ道になるのではないかと思います。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。