千原せいじが負った“致命傷” 「いじめられっ子」発言で謝罪なく…このままでは芸能界“引退”も

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仕事の消失

 実際、目に見える形での仕事の消失はすでに進行している。KBS京都のレギュラー番組「大雲・せいじの坊僧ラジオ」は、改編期ではない異例のタイミングで突如終了が決定した。9月12日に大阪の競艇場「ボートレース住之江」で行われることになっていたトークショーも、急きょ中止が発表された。

 タレントにとって、ラジオのレギュラー番組やイベントは安定的な活動の基盤になるものだが、それが相次いでなくなった事実は深刻である。YouTubeのチャンネル登録者数もどんどん減っていて、コメント欄は彼に対する批判で埋め尽くされている。

 また、彼は2024年に天台宗の得度式を挙げて、僧侶としても活動しており、日本仏教協会の顧問にも就任していたのだが、今回の騒動を受けて、顧問を辞任することが発表された。天台宗務庁からは厳重注意を受けた。もはやちょっとした失言問題というレベルではなく、タレントとしての社会的信用を失墜させる事態となった。

 それではなぜ、せいじは謝罪や訂正に踏み切らないのか。正直なところ、明確な理由はわからない。危機管理という面から考えれば、問題が明らかになったらなるべく早く謝罪をするのが原則だ。正式な謝罪をしていない状態が長くなればなるほど、批判の声は高まり、本人が反省していないのではないか、といった憶測も飛び交うようになる。時間が経ってから謝罪をしても、すでにすっかり信頼を失ってしまった状態であれば、謝罪そのものの効果が薄れてしまう。

 しかも、せいじは今回の件を受けて、師僧にあたる遍照寺の小林俊宥住職とともに天台宗務庁を訪れて、そこでは謝罪をしていたのだという。僧侶としては内々に謝っているのに、世間に対しては謝罪をしていないというのは、あまりにも不可解で不誠実な対応である。

 もちろん、ただ謝ればいいというものではない。謝罪をするのであれば、自分の発言や態度のどういう部分に問題があったのかというのを具体的に説明して、反省の意思を示すことが必要だろう。

 しかし、問題が起こった直後に謝罪したフワちゃんですら、いまだに芸能界に戻れていない現実を考えれば、せいじがここから巻き返すのはさらに困難である。時間が経てば沈静化するだろうという読みがあるのだとしたら、それは甘いと言わざるを得ない。むしろ、このままでは「悪いことをして謝らないままの人間」というレッテルが固定化するリスクが高い。

 せいじはもともと、荒っぽい口調で他人の心にズケズケと土足で踏み込むような「がさつキャラ」を売りにしていた。しかし、表向きにそういうキャラを貫くのだとしても、人として越えてはいけない一線があることは明白である。このまま誠実な対応がなければ、テレビやラジオといった表舞台に戻ることはほぼ不可能であり、千原せいじは芸能界の一線から退くことを余儀なくされるだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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