「クリエイター気取り」をコテンパンに打ちのめされた「キンコン西野」の比類なき才能

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「受け身」が上手すぎる

 お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣と言えば、絵本作家、脚本家などの顔を持ち、クリエイティブな活動を続けているイメージが定着している。最近ではテレビで見る機会も少なくなっていた。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 だが、8月18日・25日放送の「大悟の芸人領収書」(日本テレビ系)では、久々にバラエティに出演した西野が、千鳥の大悟をはじめとする芸人たちからクリエイター気取りの姿勢を指摘されて、コテンパンに打ちのめされていた。

 この番組の中で西野は、クリエイター的な活動をしている芸人はたくさんいるのに、自分と品川庄司の品川祐だけが何となく鼻で笑われているようなムードがあって、芸人にイジられているのはおかしいと力強く主張した。MCの大悟はそれに対して「お前が何を作ってるかわからへんねん」とつぶやき、「ああ、ペパル?」と言い放った。西野はすかさず「プペルや!」と返した。

 その後も、西野は自分の不遇ぶりを何とか伝えようとするのだが、大悟は「なんかなあ、(西野をイジると)ウケるのよ」と取り合わない。最終的には、イジられてはしゃぐ西野に対して「もっとムッとせえよ。楽しそうに返してるやん」と決定的な一言を放った。イジられたときの「受け身」が上手すぎるからこそ、芸人たちも西野に安心して大技をかけられる、という構造がそこにはある。そこに映し出されていたのは、たとえ活動の軸足を創作に移していても、根っこの部分で決して失われない西野の芸人としての姿勢だった。

 西野はこれまでに芸人という枠を越えた挑戦を続けてきた。絵本を出版して、映画やミュージカルを制作するだけではなく、クラウドファンディングを仕掛け、オンラインサロンを通じて時代の先端を走ろうとしてきた。自身の経験をもとにしたビジネス書も数多くリリースしている。その歩みはしばしば批判を招き、「芸人らしくない」という言葉とともに冷ややかな視線を向けられることもあった。

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