迷走を続けるコンビを象徴するような異例の報告 「はんにゃ.」は本格志向のコメディアン

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一点突破のネタ

 はんにゃ.の最大の魅力は、金田がネタ中に見せる大げさで派手な動きである。彼らの代表的なネタに「ズクダンズンブングンゲーム」というのがある。これは、金田が川島に対して「ズクダンズンブングンゲーム」という遊びをやろうと提案するというもの。そんなものは知らないと言う川島に対して、金田は「ズクダンズンブングン」というフレーズを唱えながら妙なダンスを突然始める。ほとんど金田の動きだけに頼った一点突破のネタだが、これで大きな笑いが起こるのだからすごい。金田のコメディアンとしての身体的表現力のレベルは高い水準にある。

 当時、番組内で彼らのネタを見たビートたけしが感心したような様子で「昔のコント55号ってこんな感じだったんだよ」と語っていたこともあった。ドタバタした派手な動きで笑いを取るのは昔からある手法だが、最近の若手芸人の中ではそういうタイプのネタを演じる人はあまり見かけない。はんにゃ.は、コント55号以来、日本演芸界に久しぶりに現れた本格志向のコメディアンだったのかもしれない。

 だが、その後の彼らは厳しい道を歩むことになった。2~3年でブームは収束してしまい、レギュラー番組もどんどん減っていった。コンビとしての仕事もなくなっていき、苦境に立たされた。2023年にはコンビ名を「はんにゃ」から現在の「はんにゃ.」に改めた。

 苦しい状況に変わりはないのだが「結婚と離婚の同時発表」という突飛な行動で一時的にでも注目されたのは、彼らにとってはラッキーだったのかもしれない。金田の見た目や動きの華やかさは今でも失われておらず、それを武器にしてここから再ブレークする道は残されている。もう一度、彼らが時代の波に乗る日は来るのか。ここが一つの勝負どころだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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