今日もユルすぎる「じゅん散歩」がスタートから10年に 「高田純次」が作り出した“視聴者との共犯関係”

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テキトーを楽しむ

「視聴者はテキトーな高田純次を楽しんでいるのです」(碓井氏)

 しかも、高田のテキトーには3つのパターンがあるという。

「まず、お店に立ち寄るとき、普通なら『テレビ朝日の『じゅん散歩』という番組で……』とか言うんだけど、高田さんの場合、例えばラーメン屋なら『テレ朝の《日本一のラーメン屋を探せ!》っていう番組なんだけど』とかでたらめの番組名を名乗る」(碓井氏)

 テキトーな自己紹介で店内に入ると、店員とのやりとりだ。

「まれに面白い店員の方もいるけれど、素人ですから毎回そんなに面白い人は出てきません。それでも高田さんは、相手が面白かろうがそうでなかろうが、素人には関心がない。相手にかかわらず、自分勝手なリアクションで済ましてしまう」(碓井氏)

 テキトーなリアクションである。さらに……。

「テキトーなコメントです。高田さんは飲食店で何かを食べても、その味を視聴者に伝えようなんて思っていません。美味いのか不味いのかもわからないし、高田さんに関心がなければ味に触れないときさえある。これはすごいことですよ」(碓井氏)

 最近はNHKですら食レポくらいのことはやっている。

視聴者との共犯関係

「散歩番組や旅番組といえば、彦摩呂じゃないけれど食べたり飲んだりしたら誉めまくる。ある意味それが番組の命だったりするわけですが、『じゅん散歩』にはそれがない。視聴者は高田さんのテキトーな自己紹介とテキトーなリアクション、そしてテキトーなコメントを楽しんでいるんです。だからといって高田さんに感心しているわけでもない。“今日もテキトーだねえ”“相変わらずいい加減だなあ”って、非常に屈折した楽しみ方をしているんです」(碓井氏)

 シリーズの中でも異色だ。

「高田さんといえば昔から“テキトー”と“いい加減”をウリにしてきた人ですが、そもそもは俳優ですし、全部が素であるはずもない。『じゅん散歩』では視聴者が求める高田純次をやってくれているんだと思います。一方、視聴者は『じゅん散歩』で街の魅力を発見しようとか、新しいトレンドを知ろうなんてことは思っていません。高田さんと視聴者との共犯関係で番組が成立し、10年間も続いたと言えるのかもしれません」(碓井氏)

 高田は「じゅん散歩」が10年続いたことについてコメントを発表している。

《あっという間の10年間でしたけど、僕もある程度の歳を重ねてきているから、この先続けられてあと20年かな?》(番組公式ホームページより)

「まったく相変わらず……。でも、そんな高田さんから僕らは、テキトーでいいんだよ、いい加減でいいんだよ、人生楽しけりゃ、というメッセージを受け取っているわけです。もちろん高田さんは、そんなメッセージなど出しませんけど。そんな高田さんも78歳ですが、視聴者も一緒に歳をとってきているわけです。たとえ高田さんが杖をつかないと歩けないようになっても、電動車椅子に乗るようになっても、番組を続ける気があるのなら続けてもらいたいですね。しんどい人だって散歩をしたいという超高齢化社会になっている中、前例のない番組を作っている高田さんにこそ実践してほしいと思います」(碓井氏)

デイリー新潮編集部

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