かつては“門前払い”も現在は“歓迎ムード”…「出戻り社員」を喜んで受け入れる企業が急増する背景に「納得のメリット」

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出戻り選手はプロ野球を盛り上げる一要素

 辞めたものの、復帰の意思がある者は、辞めたことが「隣の芝生は青く見える」的なものだったことを理解しており、切実に復帰を希望する。受け入れる側としても、企業風土や仕事のやり方を理解し、かつ能力を把握している者を再度雇う方が、転職エージェントに高額の仲介料を支払うよりも利点がある。

 かくして「出戻り社員」が誕生するのだが、かつての同僚が復活するのは現役社員としても嬉しいもの。「なんで帰ってきたんですか(笑)。あんだけウチの会社の悪口言ってたじゃないですか」「いやぁ……、やっぱこの会社が働きやすいんですよ」といった会話になり、この出戻り社員は歓迎されることとなる。

 さらに、出戻り社員は別の会社における知見やノウハウも手に入れているため、能力的にも期待ができる。一度辞めた引け目も感じ、会社に対して感謝をするし、日々の仕事・仲間との交流も楽しむことができる。人事交流等で別業種に社員を派遣する例はあるが、それと同じようなものなのだ。残った人からしても「ちょっと長い出向期間だったね」的感覚になる。

 かくして出戻り社員は、本人にとっても会社にとっても歓迎されるような時代になりつつあるが、フォード、ドリス、ビシエドも初出場の時は観客から大歓声で迎え入れられるだろう。それは本人にとっても感無量だし、ファンも「最高の補強だ!」とその時は思えるはず。

 もちろん、ドリスは37歳、ビシエドは36歳と全盛期ほどの活躍はできないかもしれないが、これからシーズン終盤の中継ぎの疲労が溜まる中でドリスが1イニングでも投げてくれること、ビシエドがケガで出場できないタイラー、オースティンの穴を埋めてくれれば両球団にとっては良いことだろう。

 フォードにしても、代打の切り札的な役割は十分担えることを昨年のクライマックスシリーズと日本シリーズで証明しているだけに、ファンとしては嬉しいもの。出戻り選手は決してチームに対して悪い思いを抱いていないわけで、懐かしい顔との再会シーンなど、プロ野球を盛り上げる一要素となるはずだ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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