「ワンカットで目に涙を溜めた」…死去から14年、無頼派俳優の元祖「原田芳雄」が見せた“生々しい存在感”

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大好きな鉄道を語る意外な姿も

 男性俳優を「イケメン」「イケオジ」と呼ぶことはいまや一般的だが、老若男女誰からも「いい男」と称される俳優はどれほどいるのか。銀幕にはかつて、圧倒的な存在感と演技力、えもいわれぬオーラで観客に衝撃を与える俳優が多くいた。そんな俳優のひとり、原田芳雄が世を去ったのは2011年7月19日のことである。

 1962年、俳優座養成所に14期生として入所したが、留年して15期生に。野性的で無骨なイメージは、60年代後半にドラマと映画でデビューした後に備えたものだ。凛々しい眉、サングラスの下で細められた目、厚い唇などが精悍な印象を与える一方、素顔はおだやか。業界内でも師匠・兄貴分と慕う人は多かった。

 お茶の間でもまた、テレビで大好きな鉄道(特に線路)を語る姿など、親しみを覚える瞬間が多々あった。俳優とは役を演じる仕事だが、当時を知る観客の胸にはたしかに「原田芳雄」その人が存在している。生前に交流があった人たちが語る、死去数か月前の姿とは――。

(「週刊新潮」2011年7月28日号「アウトローで始まった役者『原田芳雄』の存在感」を再編集しました。文中の肩書き、年齢等は掲載当時のものです)

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生々しい存在感を丸ごと見せてくれた

 7月19日に、俳優の原田芳雄が亡くなった。近年は老作家や会社社長など年配の役柄で渋い味を見せていた原田だが、若い頃はアウトロー風演技でファンを魅了。かの松田優作が一時期、一挙手一投足を模倣したほどである。

「無頼派俳優の、元祖ともいうべき存在でしたね」

 と語るのは、映画プロデューサーの奥山和由氏。

「テレビドラマで原田さんがホスト役をやった時、女を口説くには30秒で泣かなくてはというので、ワンカットで目に涙を溜めました。本当に役になり切る。人間の生々しい存在感を丸ごと見せてくれたのです」

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