ダルトンの要求は「愛のムチ」といえるか 企業防衛のプロが「会社は株主のものではない」と断じる理由
「会社は株主のもの」「不動産を分離せよ」――。そう主張するダルトンがふるっているのは、本当に“愛のムチ”といえるのか。今なお続くフジテレビとの攻防、そして企業イメージを落としながらも上がり続けるフジの株価に目を凝らすと、昨今圧力を強めるアクティビストとどう向き合うべきか、答えが見えてくるのだ。『株式投資の基本はアクティビストに学べ プロの投資に便乗する「コバンザメ投資」の始め方・儲け方』の著者である企業防衛のプロが、アクティビストの“本性”を暴く。(鈴木賢一郎/IBコンサルティング代表取締役社長)
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2025年6月29日に放送されたNHKスペシャル「“モノ言う株主”と日本企業 攻防の舞台裏」に、フジ・メディア・ホールディングス(フジMHD)に株主提案をしたダルトン・インベストメンツの最高投資責任者であるジェイミー・ローゼンワルド氏が登場し、こう強く語りました。
「会社は誰のものなのか? 会社は株主のものだ」
私は2003年からアクティビスト対応・敵対的買収対応のアドバイスを上場会社にしていますが、一貫して「会社は株主のものではない」とアドバイスしています。こう言うと多くの上場会社の経営者はポカンとします。「え?会社って株主のものでしょ?」と。
これは大きな誤解であり、多くの上場会社の経営者が患っている「会社は株主のものだ病」です。おそらく経営者は「株主は役員の選解任権を持っているぞ!いつでもクビにできるぞ!」ということを言われるからだと思いますが、私に言わせれば「だからなに?」程度の話なのです。
あたかも株主が「経営陣を選んでやっている」「オレが経営させてやっている」と思いがちなのですが、株主は資金を提供している存在であって、経営ができるわけではない。株主は経営者に「経営をお願いしている」のであり、株主と経営者は同等の立場であってどちらが偉いという話ではありません。
この辺を多くの上場会社は大きく取り違えています。上場会社は「会社は株主のものだ」論を刷り込まれすぎているから、アクティビスト対応を間違えるのです。
株主が所有するものとは
会社は株主のものではないという話をさらにわかりやすく言うと、例えばあなたがイオンの株主だったとして、イオンに行き、レジを通さずに果物売り場のリンゴをかじったらどうなるでしょうか?「会社は株主のものだ!だからイオンで売ってるリンゴも株主であるオレのものだ!」 通じますか?通じません。窃盗罪です。
あなたがフジMHD株主だとして、サンケイビルに行き「オレはフジMHDの株主だぞ!サンケイビルも株主のものだ!」といって空いている物件に住み着いたら?「おっしゃるとおりです。空いている部屋をご自由にお使いください」となるでしょうか?なりません。不法侵入です。
では「会社は株主のものだと言うけれど、いったい株主は会社の何を所有しているのか?」ということになりますよね。突き詰めていくと、株主が所有しているのは会社の配当可能利益や残余財産ということです。逆に言えば、債務超過の会社には株主が所有しているものがないということになります。
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