国分太一、中居正広に小山慶一郎… 「仕切れるジャニーズMC」が“消える”理由 テレビ局から忖度を受けることで特権意識が
2014年から19年にかけ、年間のテレビ出演本数で史上初の「6年連続1位」に輝いた好感度タレント・国分太一(50)が、ハラスメント事案で休業するという。ライターの冨士海ネコ氏が、「仕切り上手なジャニーズMC」が続々と不祥事を起こす理由について分析する。
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【写真を見る】国分の「パワハラ気質」が明らかとなったXでの「問題ポスト」
人気番組の顔として親しまれた男性タレントたちが、次々と画面から消えていく。今月20日、TOKIOの国分太一さんが無期限活動停止を発表した。日本テレビは同日、福田博之社長による記者会見を行い、複数のコンプライアンス違反を理由に「ザ!鉄腕!DASH!!」からの降板を決定したことを発表。プライバシーを理由に詳細は語られず、今もさまざまな臆測が流れ続けている。さらに25日には、TOKIOは解散することが公式サイトを通じて明らかになった。
だがそのニュースに、「またか」と冷ややかに反応した人も少なくなかったかもしれない。中居正広さん、小山慶一郎さん、中丸雄一さん、そして国分さん。いずれも日テレのみならず他局でも「仕切れるジャニーズ」として番組MCを務め、親しみやすく安心感のある存在とされてきた。そんな彼らが、ここ数年で相次いでスキャンダルにより表舞台から退いているのは、果たして偶然だろうか。むしろ、「仕切れる男」として求められてきた「信頼されるイメージ」が、そのまま慢心や油断へとつながる構造的な危惧になっているのではないだろうか。
「安心の顔」がなぜ不祥事を繰り返すのか 肥大する自己評価と助長させるテレビ局の態勢
国分さんといえば、NHKを含む在京キー局すべてに同時期レギュラー出演するという記録を打ち立てたことがある。フジテレビの世界フィギュア特番や、テレビ東京の「テレ東音楽祭」では、長年にわたってMCを務めてきた。前に出過ぎない姿勢と人懐っこい笑顔は多くの視聴者を魅了し、料理もスポーツも音楽もトーク番組もと、ジャンルを問わずこなす「優等生MC」の筆頭だったといえるだろう。
TOKIOの優等生MCといえば、国分さんだけではなかった。さかのぼれば2018年、未成年への強制わいせつ容疑で書類送検された山口達也さんも、日テレの朝番組「ZIP!」や、「幸せ!ボンビーガール」のMCを長きにわたって担当していた。明るく爽やかなイメージで売っていた山口さんの起こした事件は視聴者に衝撃を与えたが、山口さんの大炎上を間近で見ていたにもかかわらず、国分さんは自らもトラブルの渦中に足を踏み入れていたということになる。
さらに山口さん以外にも「仕切り上手なジャニーズ」によるスキャンダルは起こっていただけに、国分さんの危機感は実に薄かったと言わざるをえない。NEWSの小山さんは日テレ「news every.」のキャスターを務めていた時、未成年との飲酒問題が報じられ、大声でコールしながらはしゃぐ動画は視聴者の眉をひそめさせた。「シューイチ」の顔だったKAT-TUNの中丸さんは、結婚直後に女子大生とのホテル密会がすっぱ抜かれて活動を自粛。そして中居さんは、引退を表明した後も、フジテレビ問題がいまだくすぶっている。
なぜ、信頼を売りにするMCタイプのジャニーズタレントが、ここまで立て続けに失敗するのか。一つの仮説として挙げたいのは、彼らが「信頼される役割」を長く演じ続けてきたことによる、自己評価の肥大と感覚の鈍化である。
彼らの共通点は、「視聴者の前では好感度の高い、安心感のあるMC」であると同時に、「テレビ局との蜜月関係の中で特別扱いされてきた存在」であるということだ。特に日テレをはじめとしたキー局では、ジャニーズタレントがMCを務める番組が長年定着しており、出演交渉や編成においても忖度(そんたく)的な扱いを受けてきた背景がある。
その結果、本人も「自分は守られる側の人間」という無自覚な特権意識を持つようになったのではないか。これが、一般社会の倫理観とのズレを生み、不祥事へとつながっていってもおかしくはない。言い換えれば、MCとして「信頼されるふり」がうまいことが、プライベートでの油断を誘発する構造的な危惧になっているのだ。
MCに求められるのは、場の空気を読み、柔らかくまとめる力だ。突飛な発言はせず、共感を誘う表情で「視聴者の分身」のように振る舞うこと。国分さんたちは多くの旧ジャニーズタレントの中でも、とりわけその適応力に長けていたからこそ重宝されてきた。
だが裏を返せば、その「作られた信頼」が本人たちに「自分は常に正しい」と錯覚させる要因にもなっていたのではないだろうか。周囲のスタッフが気を使い、メディアが追及を控える環境であればなおさら、自浄作用は働きにくい。ジャニー喜多川氏存命時代は、メディアへの影響力は絶大だったといわれる。国分さんの処分理由はいまだ明らかにされていないが、コンプライアンス違反があったとしても、表立ってとがめることができる関係者などほとんどいなかったに違いない。
特に日本テレビとの蜜月関係は、問題の構造を見えにくくさせただろう。「ZIP!」「news every.」「シューイチ」……そして、ジャニーズタレントが連綿とパーソナリティーに抜てきされてきた「24時間テレビ」。一連の起用ラインナップを見れば、日テレがジャニーズタレントを「国民的MC」としていかに重用していたかがよく分かる。
だからいざ問題が起きても、報道は慎重過ぎるほど控えめで、深掘りされることは少なかった。ジャニーズMCたちが「信頼を裏切った」というよりは、「信頼が過剰に演出されていた」だけなのではないだろうか。
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