日本ハムの新庄監督にも影響を与えた? かつて恩師「野村監督」と「たけし軍団」がファンを歓喜させた「伝説のツーランスクイズ」とは

スポーツ 野球

  • ブックマーク

石川選手が見せた「空振りスクイズ」

 スクイズを空振りしたのに結果的にツーランスクイズになる“爆笑珍プレー”を演じたのが、広島・石原慶幸だ。

 2017年5月14日の巨人戦、5対1とリードした広島は8回1死から西川龍馬、野間峻祥の連打と乾真大の暴投で二、三塁とチャンスを広げる。ダメ押し点が欲しい緒方孝市監督は、打者・石原にカウント2-1からスクイズを命じた。

 ところが、乾の4球目は外角低めにワンバウンドする暴投となり、石原は必死にバットを伸ばして当てようとするも、あと数センチ届かず、空振りしてしまう。

 だが、幸運にもワンバウンドしたボールは、捕手・小林誠司の目の前で大きく跳ね上がると、バックネット方向に転がっていくではないか。

 この間に本来なら挟殺プレーでタッチアウトになってもおかしくなかった三塁走者・西川に続いて、二塁走者・野間もホームイン。結果的に空振りのツーランスクイズ(記録は重盗と暴投)の珍事となった。

 これまでにも、ボールを見失った直後、グラウンドの砂を掴んで一塁走者をけん制(2013年5月7日・DeNA戦)、二塁からアウトになったフリをして、ちゃっかり進塁(2016年7月27日・巨人戦)など、インチキ臭い珍プレーで人気を博していた石原とあって、ネット上でも“史上最高のインチキ発動”と盛り上がった。

たけし軍団のツーランスクイズを前に敗北した阪神若手チーム

 最後はツーランスクイズの番外編的エピソードを紹介する。

 1991年11月23日、甲子園で行われた阪神のファン感謝デーで、阪神の若手主体のメンバーとたけし軍団の親善試合が行われた。

 2対0とリードして最終回(6回)を迎えた阪神だったが、井出らっきょのツーランスクイズなどで一挙4点を奪われ、まさかの逆転負け。

 シーズンオフのイベントとはいえ、プロのチームが敗れるという大番狂わせに。たけし軍団側は「これでオレたち(セパ12球団の)12位、阪神は13位や」「阪神の選手は、この試合も契約更改に響くよ」と気勢を上げた。

 一方、5年間で最下位4度と暗黒時代の真っただ中だった阪神・中村勝広監督は、試合後、コメントを取ろうと多数の報道陣に囲まれると、「(また)敗戦コメントか……」と苦笑いするばかりだった。

 ちなみにこの日の阪神は、当時1軍通算出場13試合とまだブレイク前の新庄監督もクリーンアップの5番を打っていた。ツーランスクイズでたけし軍団に敗れた苦い体験が、野村ID野球を経て、現在に生かされていると言えなくもない?

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。