“お手々のしわとしわをあわせて、しあわせ”の「はせがわ」が大ピンチ ライバルは「1万円台」で買えるニトリの仏壇

国内 社会

  • ブックマーク

〈お手々のしわとしわをあわせて しあわせ な~む~〉のCMで知られるお仏壇の「はせがわ」が、苦境に立たされている。

 ***

ニトリの仏壇は“1ケタ”安い

 仏壇・仏具のマーケットは約500億円。その中にあって、はせがわはトップ企業で、ここ20年ほどは毎年200億円前後を売り上げてきた。今期の純利益も約9億円である。ところが、5月15日の決算発表で、来期の純利益が半減するとの予測を明らかにしたのだ。何が起きているのかというと、同27日の決算説明会で新貝三四郎社長が、ある企業の参入を挙げたのだ。

〈具体的にいえばニトリさんなどのホームセンターの参入が、この3年間増えてまいりました〉

「お、ねだん以上。ニトリ」で知られる家具業界のトップ企業が、仏壇にも手を広げてきたというのである。そこで、改めてはせがわに聞くと、

「決算説明会では弊社社長がニトリさんの名前を挙げましたが、仏壇は他のホームセンターでも扱うようになっています。もともと神棚などの祭礼道具を扱うホームセンターはあったのですが、コンパクトなものなら仏壇も家具の一種と考えたのでしょう。値段も安くて、弊社で扱う仏壇の平均価格は約30万円ですが、ニトリさんの仏壇はそれより1ケタ安いのが実情です」(広報担当者)

テーブルに置ける「1万円台」の仏壇

 その昔、一般家庭にあった仏壇は金色の装飾がちりばめられ、値段も100万円以上が普通だった。専用の「仏間」も珍しくなかったが、今どきのマンションに大きな仏壇を置くスペースはない。どんなものを売っているのか東京都内にあるニトリを訪ねてみる。

 ベッドやソファーが並ぶ売り場を抜けると、中型テレビほどの大きさの仏壇が見えてくる。看板には「メモリアル家具」と書かれており、木目調や白塗りの仏壇が並んでいる。どちらかというと落ち着いた雰囲気の「箱」だ。価格は1万円台からあって、食卓テーブルの上にも置けそうだ。

 長年、はせがわを取材してきた葬送ジャーナリストの碑文谷創氏が言う。

「日本は生まれる人の数より死者の方が多い“多死社会”ですが、葬祭の規模は縮小しています。新しく墓を作る人は以前の4割を切っているし、葬式も家族葬が増えている。仏壇も同様で、はせがわも時代に合わせて装飾を省いたりサイズを小さくするなどの対策を取ってきましたが、そうなるとホームセンターのような他業種もまねをしやすくなるわけです」

 ライフスタイルの変化のしわ寄せが来たというわけである。

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。