令和初の快挙となるか注目 オリックスの“タフネス右腕”九里亜蓮が挑戦中…6年間も達成者が現れない“大記録”とは

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 オリックス移籍1年目のタフネス右腕・九里亜蓮が、2018年に巨人・菅野智之(現・オリオールズ)が202イニングを投げて以来、6年間途絶えている投球回数200イニングに挑戦中だ。広島時代の2023年に自己最多の26試合に登板し、12球団最多の174回1/3を投げた実績からも、令和初の快挙が達成できるか注目される。平成以降、「タフ」と呼ばれた鉄腕たちを振り返ってみよう。【久保田龍雄/ライター】

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平成のトップは桑田真澄の249イニング

 投手の分業制が定着した平成のプロ野球は、昭和の大エースのようにシーズン300イニング以上(時には400イニング以上)も投げるつわものはいなくなったものの、シーズン200イニング以上を投げる投手たちは、それほど珍しくなかった。

 平成初年の1989年には、巨人・桑田真澄の249回をトップに、中日・西本聖(246回2/3)、巨人・斎藤雅樹(245回)、近鉄・阿波野秀幸(235回2/3)、西武・渡辺久信(226回2/3)、広島・川口和久(208回1/3)、日本ハム・西崎幸広(208回)、ロッテ・荘勝雄(207回1/3)、阪神・マット・キーオ(201回)と、令和の世なら「スーパーエース」と呼べそうな投手が9人もいた。

 特に、藤田元司監督時代の巨人は「先発完投」がモットーとあって、斎藤は翌90年にも登板27試合中19完投の224イニング、桑田も91年に先発27試合中17完投の227回2/3、92年にも登板29試合中11完投の210回1/3とフル回転。シーズン130試合の時代にあっても、エースは30試合近くに先発し、200イニング以上投げることが半ばお約束だった。

 広島・佐々岡真司も、先発、抑えのどちらもOKのタフな投手で、1年目の90年に151回1/3を投げ、6完投勝利を含む13勝17セーブを記録。先発に専念し、リーグトップの240回を投げ抜いた翌91年には、リーグ最多の17勝を挙げ、チームの5年ぶりVに貢献した。

 93年には中日・今中慎二が89年の桑田と並ぶ249回を投げ、17勝と247奪三振(ともにリーグ最多)を記録したが、翌94年も197回を投げるなど、酷使の影響で肩を痛め、29歳の若さで引退したのが惜しまれる。

かつてはダルビッシュや田中将大も「大台」を突破していた

 一方、パ・リーグでは、近鉄・野茂英雄が1年目の90年に235回、91年に242回1/3を投げ、2年連続12球団最多を記録した。93年にもリーグ最多の243回1/3を投げるなど、日本球界在籍5年中4年までシーズン200イニング以上を投げ抜いた。平成を代表するタフネス右腕と言えるだろう。

 90年代後半以降では、ロッテ・黒木知宏が97年に12球団最多の240回2/3、99年に212回2/3と2度にわたってシーズン200イニング以上を記録したが、前出の今中同様、酷使で右肩を痛め、長く活躍できなかった。

 これに対し、同じロッテの小宮山悟は98年にリーグ最多の201回2/3を投げるなど、計3度にわたってシーズン200イニング以上を記録しながら、メジャーでもプレーし、44歳まで現役を続けた。

 2000年代以降では、05年にホールドが導入され、阪神のJFK(ジェフ・ウイリアムス、藤川球児、久保田智之)に代表される強力リリーフ陣による必勝パターンが確立されると、先発は5、6回程度で降板するケースも増えてきた。この結果、シーズン200イニング以上を投げる先発投手も比例して少なくなり、到達しても200~206回程度がほとんどとなる。

 そんな減少傾向の中で、11年に日本ハム・ダルビッシュ有(現・パドレス)が232回、楽天・田中将大(現・巨人)が226回1/3を記録しているのが目立つ。同年に導入された“飛ばない”「統一球」の影響で投高打低になる追い風もあったが、田中は14、ダルビッシュは10と完投数も多く、7回未満での降板もダルビッシュはゼロ、田中は1試合と総じて長いイニングを投げていた。

 ダルビッシュは、阪神・井川慶、広島・前田健太(現・カブス)とともに計4度にわたって200イニング以上を記録。田中も無傷の24勝0敗を記録した13年にも212回を投げ、同年はオリックス・金子千尋も12球団トップの223回1/3を記録した。

 だが、翌14年以降、200イニング超えの投手はさらに減少し、18年の菅野まで計5人。16、17年はゼロで、1シーズン平均1人と希少なものになった。

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