「女性天皇」と「選択的夫婦別姓」に共通する課題 「伝統」を重視するのか「変化」を受け入れるのか

国内 社会

  • ブックマーク

男女雇用機会均等法40年

「女性・女系も排除すべきでない」

 これは読売新聞の一面に「象徴天皇制 維持すべき」との提言が掲載された5月15日の朝刊で躍った社説の見出しだ。保守主義的な主張が目立つ読売新聞の提言だっただけに、女性天皇反対派の間には大きな衝撃が走った。時を同じくして毎日新聞が5月17、18の両日に実施した全国世論調査では、女性天皇に賛成が70%だったのに対して反対はわずか6%だった。小泉元首相が有識者会議を設置した際の毎日新聞の調査では87%だった賛成意見と比較すると減ってはいるが、依然、女性天皇を支持する意見が多数を占めている。

 また、夫婦別姓を巡る情勢にも変化がみられる。昨年9月に行われた自民党総裁選で勝利した石破首相の有力対抗馬とされた小泉進次郎・現農相は、言わずと知れた小泉元首相の次男。総裁選で小泉農相は「選択的夫婦別姓を認める法案を国会に提出する」と公約に掲げたが、投票結果は3位にとどまり公約は果たされなかった。

「小泉家にとっては女性天皇も夫婦別姓も志半ばとも言えます。女性皇族の夫を皇族にしない場合、夫の名字はどうなるのでしょうか。小室圭さんと眞子さんのようにはならないとすると、愛子さまの夫は名字を失うのか。夫にだけ名字がある状態となるのか。謎です」(同幹部)

 宮内庁書陵部OBはこう解説する。

「天皇の存在を意味付ける最大の柱は宗教儀式の主宰者であることです。その儀式が女人禁制なわけですが、神道も歴史の中でさまざまな変遷を遂げています。聖武天皇が仏教に帰依した8世紀から江戸時代の終焉までは、神仏習合が常識でした。つまり神と仏が同一視されていたのです。しかし明治時代に神仏分離が決まり、寺院と神社は分断されたのです」

 また、別の宮内庁OBはこう指摘する。

「親王の位置付けも、奈良時代と親王宣下が制度化された平安時代、世襲親王家が置かれた江戸時代、そして現代で全く異なります。皇室が世界最古の王朝と呼ばれるのは、時代の潮流に皇室が柔軟に対応してきたからではないでしょうか。必要な変化は受け入れる、しなやかさがあることが皇室の伝統なのです」

 男女平等も、ジェンダーフリーも世間では常識として定着した感がある。最後に政府関係者はこう語った。

「男女雇用機会均等法が1985年に成立してから40年の時が流れた。そう考えれば常識となるまではむしろ時間がかかり過ぎた。女性天皇は絶対に駄目なのか。女性は結婚相手の姓を名乗らなければならないのか。さすがに結論を出すべきタイミングがきているのではないか」

朝霞保人(あさか・やすひと)
皇室ジャーナリスト。主に紙媒体でロイヤルファミリーの記事などを執筆する。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。