“レトロな写り”だけじゃない…スマホを持たないネット編集者が教える「デジカメ」の“意外なメリット”

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なくしたのがスマホだったら

【6】小さい
 2020年以降使っている計4台のカメラはいずれも短パンのポケットに入るもので、スマホよりずいぶん小さく持ち運びがしやすい。

【7】とにかく記録するだけのためならばデジカメで十分
 別にプロの写真家になりたいわけでもないし、今のスマホはある程度の使いこなしができる人なら上手な写真を撮れるもの。あくまでもちょっとした記録のためだけに持っているので、写真の出来栄えを気にしない人間はデジカメでいい。

【8】なくしたり、水没させたりしてもそこまで凹まない
 私の愛機IXYは2回連続で海水に水没させたが、1回目はSUP(スタンドアップパドルボード)中に落とし、2回目はシケの日にイカ釣り船に乗っている時のこと。カメラを取り出したところで船が大きく揺れ、甲板を伝って生簀に入ってしまった。さすがに水没(しかも海水)に勝つことはできず、すぐに買い換えを決定。

 もしもこれがスマホだったら「クラウドにデータは全部入っているから大丈夫なはずだ」と自分に言い聞かせるために強がって、確認できるまで不安になる。新端末を入手するまでコミュニケーションが取れず、仕事もできないといった事態になる。たかが写真を撮るためだけにスマホを落として壊したり、どこかに忘れてドキドキする恐怖感がデジカメにはない。要するに、スマホという人生において重要過ぎるものと「たかが撮影」を同じ端末にさせてしまうことには弊害があるのだ。

撮影係にならずに済む

【9】他人と同じことをしているのが気恥ずかしい人間にはいい道具
 7人掛けの電車の席に座っていたら、目の前の7人、そして自分の側の6人全員がスマホを見ていて、立っている乗客もスマホを見ているという状況に置かれたことはある。とはいっても、今や都会の電車の中では75%がスマホを見ているだろう。仮に自分がスマホを持っていたとしても、全員が同じことをやっている光景というのはどこか気恥ずかしいので、多分スマホは出さず、本を読んだりすることだろう。

 それと同様に、先日国民民主党の玉木雄一郎代表らが博多駅前で演説していた時、聴衆の多くがスマホを出して玉木氏の撮影をしていた。祭りの山車の通過、観光地のランドマークや滝や鳥居等の前でも人々は一斉にスマホを出している。これと同じことをするのはやはり気恥ずかしい。デジカメで撮影をしていたら少し気恥ずかしさが消える。

【10】撮影係・送信係にならないで済む
 仲間で集合写真を撮る際、カメラマンになる人は自分のスマホで撮影をする。その人も入るべきなので、私は撮影係を2枚目では買って出るが、その後LINEグループで送る時はノータッチ。デジカメユーザーには絶対にあり得ない係をやらないで済む。
 花火モードなど各種モードを使いこなせればそれなりに上手に写真は撮れるかもしれない。スマホ(ネット)がリアルに入り込み過ぎた今だからこそ、デジカメを使うと煩わしい人間関係から逃れて写真を撮ることができるのである。皮肉にも、ライバルのスマホによって見出されたデジカメの魅力、味わってみてはいかがだろうか。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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