「同じゴール設定をして、同じ方向を向く」 ラグビー“多国籍”日本代表を支えた裏方が明かすマネジメント術
赤い甲冑と黒い甲冑
全く違うタイプの2人だが、共通していたのは、チーム全員の「意識を揃える」ことへの執着だった。「みなができるだけ同じページを見る」作業が欠かせず、大村氏もそこに尽力したという。
「昔のスタイルで『ああしろ、こうしろ』と言っても、今の子は受け付けてくれない。可視化をして、雰囲気を作ることで、『あっ、そうだな』と理解させて、わからせる環境を作ってあげることが重要でした。そうすると、素直にスーッと理解するんです」
こうした「可視化」の象徴的な例として、合宿所やホテルには二つの「甲冑」が飾られた。大きな「赤い甲冑」は「目指すべき誇り高き理想の姿」を、小さな「黒い甲冑」は「内面に潜む影と向き合う覚悟」を表していたという。墨絵師・御歌頭(おかず)氏に日本代表の墨絵や墨文字をお願いし、気持ちを奮い立たせる工夫もした。
「選手やスタッフと『どのようなチームになりたいか』『外国人も日本人もこうありたい姿は何か』という話し合いが何度も行われました。その時に出てきたのが、日本を象徴する『侍』です。侍を具現化するものとして、私が『甲冑』を見つけてきて、飾りました」
こうしたアイテムだけでなく、チーム内で重要だったのが2014~21年まで日本代表のキャプテンを務めたリーチ・マイケルのような選手だった。
「リーチはニュージーランド育ちで、母親はフィジー人。高校で日本に来て、色んな思考パターンを持っているんです。全然違う価値観を持っている選手間のいい“接着剤”になってくれた。結局のところ、どんなに多様性があっても、勝ちたいという気持ちは皆同じなんです」
ラグビー日本代表がもがき苦しみながらも「一つになる」様子は、大村氏の近著『ONE TEAMの真実』に詳しく書かれてある。きっと様々なビジネスシーンでも役に立つはずだ。
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第3回【選手への「詰め方は半端ではなかった」 ラグビー日本代表「快進撃」のウラにあった壮絶な戦い】では、3人の個性派ヘッドコーチについて語っている。
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