「米国で近く内戦勃発」の噂に現実味…トランプ政権も民主党もアテにならない現状が向かう先は「民主制の否定」か

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トランプ関税で中間層の負担は年間約33万円

 トランプ米政権が導入した政策が、国民の生活に悪影響を及ぼし始めている。

 ミシガン大学が5月16日に発表した5月の消費者態度指数(速報値)は50.8と、前月の確報値(52.2)から1.4ポイント下がった。5カ月連続の低下で、2022年6月に次いで過去2番目に低い水準だ。関税政策への懸念から、1年先の予想インフレ率は約44年ぶりの高水準(7.3%)に上昇している。

 イエール大学予算研究所の分析によれば、トランプ関税により典型的な中間層の世帯は年間2237ドル(約33万円)の負担を強いられるという。

 米国の第1四半期の家計債務残高は前年同期比2.9%増と、過去最高となった。学生ローンの特例措置(支払いを延滞しても不履行扱いとならない)が解除されたため、延滞率が5年ぶりの高水準を記録した。

 先行き不安から4月の小売り売上高は前月比0.1%増と急減速している。

堅調だった雇用市場も今後は不調か

 個人消費に加え、企業活動にも暗雲が立ち込め始めている。

 米連邦準備理事会(FRB)が15日に発表した4月の製造業生産指数は、自動車生産の急激な落ち込みが災いして0.4%低下した。FRBは、第2四半期も回復が難しい可能性が高いとみている。

 5月は米住宅建設企業の景況感を示す住宅市場指数も下がり、2023年11月以来の低水準となった。消費者が購入をためらっていることと、関税の影響で住宅価格の設定が難しくなったことが主な要因だ。

 FRBが12日に発表した今年第1四半期の銀行融資担当者調査では、企業向け融資基準を厳しくした銀行の割合が増加したことも明らかになった。今年に入り、米国では企業倒産件数が増加しているため、堅調だった雇用市場も今後、不調になる可能性が排除できない。

問題は関税ではなく「不確実性」

 ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は4月に出演したポッドキャスト番組で、米国経済のリセッション(景気後退)懸念の原因は、関税ではなく先が予測できないことだと指摘した。消費や投資の意思決定を妨げるのは「不確実性」だというわけだ。

 英紙「ガーディアン」と米調査会社「ザ・ハリス・ポール」が12日に発表した世論調査の結果によれば、住宅購入を計画している人の75%が「計画を変えた」と回答した。

 トランプ政権は5000ドル(約73万円)の出産ボーナスの支給を検討しているが、今年出産する計画だった人の65%が「現在の状況が出産計画に否定的な影響を及ぼした」と答えた。「結婚計画を再考する」と答えた割合も6割に上った。

 トランプ大統領は「関税政策で米国を再び裕福にする」と主張しているが、これを信じる米国人はほとんどいないのが実情だ。

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