相手チームを「無安打に抑えながら敗戦」という超レアケースも 「ノーヒットノーラン」よりも珍しい“無安打有失点試合”が生まれる条件とは

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8回が“鬼門”となるケースが多い

 近年では、“ノーノー未遂”ならぬ“ノーワン未遂”も何度か見られている。

 2014年7月15日のオリックス対楽天では、楽天の先発・辛島航が初回に2四球を与えたあと、二塁走者・ヘルマンの三盗の際に捕手の三塁悪送球で1点を失ったが、2回以降は味方の好守備にも助けられ、7回まで無安打1失点に抑えた。

 だが、8回からリリーフした福山博之が2死後、安達了一に初安打を許し、無安打記録はあと4人でストップ。7対1で迎えた9回は、ルーキー・松井裕樹が3者連続三振で締めくくり、3人の継投で1安打1失点の勝利となった。

 6勝目を挙げた辛島は、「8回以降も続投したかった?」の質問に、「点を取られてましたし、(ノーヒットノーランではないので)どっちでも良かったです」と答えている。

 また、21年4月13日の巨人対中日では、巨人の先発・サンチェスが2回に四死球と2つの内野ゴロで1点を失ったものの、7回まで無安打8奪三振の快投で、“ノーヒットワンラン”まであと6人となった。

 だが、広岡大志の右越えソロで2対1と勝ち越した直後の8回1死、投手の大野雄大の打順で、左の代打・井領雅貴が告げられると、原辰徳監督は迷うことなく左腕・中川晧太にスイッチ。皮肉にも中川は井領に初安打を許し、前出の近鉄・牧野、山本以来57年ぶりの珍記録は幻と消えた。

 1990年5月17日の近鉄対日本ハムでも、近鉄の先発・山崎慎太郎が四球と野選絡みの1失点だけで、7回まで無安打に抑えたが、8回の先頭打者・田中幸雄に初安打を許している。先発でも継投でも8回が“鬼門”となるケースが多いようだ。

 その後、中川は後続2者を連続三振に打ち取り、9回もデラロサが3者凡退に抑えたことから、8回1死まで“ノーヒットワンラン”のサンチェスにシーズン初白星がついた。

 マニアックなファンとしては、村山以来史上3人目の“無安打有失点完投”も見たいところだ。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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