“超上級者”向け「最強の保護猫譲渡会」が話題 人間不信な“シャーシャー猫”が生まれる切実な事情
シャーシャー猫、実は優しい性格の子が多い
シャーシャー猫ばかりを集めて譲渡会を開く。斬新なアイディアが生まれたきっかけを、これまで多くの猫と向き合ってきた「ねこかつ」スタッフの萩原夏美さんに聞いた。
「私たちはこれまで各地で保護猫の譲渡会を行ってきましたが、抱っこに慣れている猫や子猫が人気で、どうしてもシャーシャー猫は避けられてしまう傾向がありました。でも、シャーシャー猫はツンツンしているけれど、触れ合ってみるとかわいいんですよ。そんな子たちにもどうにかして、おうちを決めてあげたいと思って始めたのがきっかけです」
萩原さんによれば、シャーシャー猫は多頭飼育崩壊の現場で保護された猫に多いという。
「猫の性格は人間同様に千差万別。シャーシャー猫たちは、もともと人間が苦手なこともありますが、様々な理由で人間不信になったケースも多いのです。特に多頭飼育崩壊の現場では、20頭、30頭という猫が満足に食事も与えられず、飼い主からの愛情が行き渡らないことが多いんですよ。結果、人間に慣れることができず、シャーシャー猫になってしまうのだと思います」
萩原さんが指摘するように、保護猫といっても最初から人に寄って来る猫もいれば、心を開くまで時間がかかるケースもあり、ケースバイケースのようだ。ちなみに、筆者の家の猫も多頭飼育崩壊の現場から保護されているが、向こうから寄ってきて、ひざの上に乗ってくれるまではそれなりに時間がかかったと記憶している。シャーシャー猫を人に慣れさせるのはかなり難しいのではと想像されるが、どうなのだろうか。
「私はこれまでたくさんのシャーシャー猫を見てきましたが、本当は性格が優しい子も少なくありません。お迎えされてから穏やかな性格に変化するパターンもたくさんあります。それに、猫が心を開いていく過程がたまらないという方もいますし、そういう方が積極的に最強の保護猫譲渡会にお越しくださっています」
ちなみに、初回は40頭のうち18頭が迎えられ、2回目は44頭のうち3頭が迎えられた。3回目の譲渡会終了後に改めて話を聞くと、40頭のうち7頭に新しい家族が決まったそうである。
不幸な猫がこれ以上増えないでほしい
「ねこかつ」にやってくる猫は、多頭飼育崩壊はもとより、野良猫、捨て猫など様々なケースがある。そして、シャーシャー猫を生み出す原因を作っている問題が、人間側にあることも珍しくないようだ。不幸な猫を増やさないためにも、飼い主の自覚は必要であろう。
保健所などで保護猫を迎え入れることは、それまでもできた。しかし、そもそも保護猫を迎える仕組みがあること自体を知らない人もいたと思う。そんななかで、保護猫カフェの先駆的な存在である「ねこかつ」はこれまで膨大な頭数の猫を保護し、飼い主とマッチングすることに一役買ってきた。
保護猫を迎えるという選択肢を広めた意味でも、「ねこかつ」の存在は大きいといえる。「ねこかつ」では今回のような特徴的な譲渡会のほか、通常の譲渡会も随時行っている。保護猫を迎え入れて一緒に幸せに暮らす、そんなライフスタイルが広まってほしいものである。