プロ野球今週の「隠れた勝利の立役者」 阪神ファンを沈黙させた“育成経験投手”、日本記録に王手をかけた“鉄腕”の渋い活躍も

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 連日熱戦が続いているプロ野球のペナントレース。試合後にはヒーローインタビューが行われるのが定番となっているが、それ以外にも勝敗を左右するプレーを見せる選手は少なくない。そんな“隠れた勝利の立役者”について5月5日から11日に行われた試合から探ってみたい。【西尾典文/野球ライター】

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昨年まで7年間の一軍登板はわずか10試合

 投手では、やはり先発とクローザーにスポットライトが当たることが多いが、田中瑛斗(巨人)が中継ぎで見事な活躍を見せた。

 7日の阪神戦、田中の出番は巨人が2点リードで迎えた7回表だった。この回から登板した高梨雄平は、先頭の中川勇斗から三振を奪ったものの、続く近本光司にセンター前ヒットを浴びると、中野拓夢には死球を与えてワンアウト一・二塁のピンチを招く。

 ここで迎えるのは前の打席でツーランホームランを放っている森下翔太。ここでホームランが飛び出せば一気に逆転という場面で、阪神ファンのボルテージも最高潮に達していたが、ここでマウンドに上がった田中は臆することなく得意のシュートを投げ込み、見事に森下を併殺打に打ちとった。

 続く8回は大勢、9回はマルティネスが阪神打線を0点に抑えて、巨人はそのまま逃げ切っている。巨人は前日まで阪神に5連敗を喫しており、この日の勝利は大きかったと言えるだろう。

 田中は、2017年のドラフト3位で柳ヶ浦から日本ハムに入団しているが、故障もあって一時は育成契約となるなど、昨年までの7年間で一軍では10試合の登板に終わっている。

 しかし昨年オフの現役ドラフトで今年から巨人に移籍すると、オープン戦では6試合に登板して、防御率0点台と結果を残して開幕一軍入り。

 レギュラーシーズンでもここまで15試合に登板して防御率こそ3点台ながら失点したのは、わずかに2試合で、チーム2位タイとなる8ホールドをマークする活躍を見せている。

 巨人は、左腕のバルドナードと右腕のケラーが不調で、外国人枠の問題もあってフル回転が難しい状況だ。今後も田中が重要な場面で起用されることが多くなりそうだ。

間もなく新記録達成のベテラン投手

 パ・リーグの中継ぎ投手では、大ベテランの宮西尚生(日本ハム)が存在感を示した。7日のオリックス戦では延長10回裏、ワンアウト一・二塁のピンチから登板。“代打の代打”で起用された若月健矢にヒットを許して満塁としたものの、続く森友哉を三振、頓宮裕真をキャッチャーファウルフライに打ち取り、無失点で切り抜けた。試合は、両チーム譲らず2対2の引き分けに終わっている。

 さらに、10日の楽天戦では1点差に追い上げられた6回表、ツーアウト二塁から登板。迎える打者は、楽天のゴールデンルーキー、宗山塁だったが、スライダーを外角低めに集めて三球三振に仕留めた。試合はそのまま日本ハムが逃げ切って、8対7で勝利をおさめている。

 宮西は、入団以来14年続いていた50試合登板が2022年で途絶え、その後の2年間も31試合、30試合と登板数は少し減っているとはいえ、重要な場面での集中力はまだまだ健在だ。

 10日の楽天戦での登板で岩瀬仁紀(元中日)が持つ879試合連続リリーフ登板のプロ野球記録にも並び、今週中には新記録達成の可能性が高い。ここからどこまで記録を伸ばすかにも注目だ。

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