「体重急増」に「稽古不足」…「大の里」最速綱取りに囁かれる不安 巡業でも親方衆から“ダメ出し続出”だった
5月11日に初日を迎える大相撲夏場所(東京・両国国技館)の最大の注目は、何と言っても大関・大の里(24=二所ノ関)の綱取りだ。成功すれば、初土俵からの所要場所数(13場所)で昭和以降最短、新入幕からの所要場所数(9場所)でもあの大鵬を上回る(年6場所制になって以降)最速でのスピード出世となる。また、6年ぶりの日本人横綱の誕生でもある。しかし、記録がかかった注目の15日間となるにもかかわらず、親方衆や記者たちの間に高揚感はあまりないという。その理由は、ひとえに大の里のキャラクターにある。
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母と妹の前で
大の里は24歳。日体大を経て2023年5月場所、幕下10枚目格付け出しで初土俵。以来、4場所で入幕を果たし、7場所で初優勝(歴代最速)、9場所で大関に昇進した(歴代最速)。先場所は優勝決定戦を制し、自身3回目、大関としては初めてとなる賜杯を手にした。今場所で連覇を達成すれば、上記のような超スピード記録での横綱昇進となるのだ。また、師匠・二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)が引退した2019年以来、6年ぶりの日本人横綱となる。貴乃花が引退した2003年以降の22年間で和製横綱はまだ稀勢の里1人だけ。協会や好角家の期待が集まるのも当然である。
ところが、その期待が急速にしぼんだのは5月2日の横綱審議委員会の稽古総見。大の里を一目見ようと5500人の観客が訪れ、母・中村朋子さんと、美人との誉れ高い妹・葵さんも来場。しかし、その前で大の里は16番取って6勝10敗に終わったのである。
「散々でした。しかも、先場所休場したばかりの横綱・豊昇龍に1勝8敗。本当に綱取り場所なの? と思うほどほど結果も内容も酷かった。八角理事長(元横綱・北勝海)も“アピールに欠けた。必死さがなかった”とおかんむりでした」(相撲担当記者)。
ぶっつけ本番
本人が「稽古不足。上半身と下半身がバラバラ」と述べたように、原因は調整不足の一言に尽きる。力士は通常、番付発表から本場所に向けて身体を仕上げていくが、大の里は4月28日の番付発表後、体調を崩して稽古を休んでいた。5月1日に行われた一門の重要行事・(二所ノ関一門)連合稽古も欠席。横審の総見はぶっつけ本番だったから、惨敗も当然であろう。
「しかも、記者に体調不良について聞かれた親方は“怪我ではない”としつつ詳細を明かさなかった。何か表に出来ないような事情があったのでしょうか。気になるのは、今場所前の計測で、大の里の体重が191キロと2月に比べて8キロも増え、幕内最重量となったことです。力士が急激に体重を増やすことは膝などに負担がかかりますから、あまり勧められたことではありません。体調不良と結び付け、場所の間にタニマチに連れ回され過ぎたのではないか、と口さがない声も出てきているほどです」(同)
慌てて動いている
実は大の里は、新大関で迎えた昨年九州場所でも、場所前にアデノウイルスに感染、巡業を休んだ。稽古不足が祟って9勝6敗に終わっている。場所前の体調管理が課題のひとつであろう。
屈辱の総見後は、出稽古に行くなどして4日連続で相撲を取り、ペースを上げている。5月6日には師匠と3番稽古を実施。10番中8番勝ち、親方も「もうバッチリだと思う。大丈夫」と珍しく弟子を褒めたが。
「場所前に慌てて動いている印象ですよね。それならば春巡業で、もっとしっかりと稽古に取り組むべきだったのでは」(同)
3月末から4月末にかけて行われた巡業でのこと。
「そこでの大の里の姿を見た親方衆からは、稽古の量も少ないし、質もよくないとダメ出しの声が出ていました。例えば鳴戸親方(元大関・琴欧洲)は稽古の低調さを嘆いた後で、“それでも(大の里が)勝っちゃうのが問題。本人もやってないけど、周りもやっていない”と角界全体の意識の低さにあきれ顔。最終日も大の里は朝稽古で相撲を取らず、巡業部長の境川親方(元小結・両国)は、“やる時はやるんだけどね。若いんだからもっと(稽古に)積極的にならないと”と苦言を呈していました」(同)
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