万博「閉幕後」にくすぶる跡地問題 夢洲に残される無駄な空間…タワービル計画は幻に終わる
駅構内の「無駄な空間」
筆者は万博のテストラン初日となった4月4日に夢洲駅へと足を運んだ。夢洲駅は2025年1月に開業したばかりの新しい駅で、ホームから改札までの通路は大型サイネージパネルや顔認証による改札機が設置されるなど、最新技術が存分に盛り込まれた駅だった。
だが、改札から外に出るまでの駅構内には無駄に広漠な空間があるだけで、そこが有効活用されているとは言い難かった。
筆者が無駄のように感じた空間は駅補完施設と呼ばれるスペースで、駅構内のほか駅前広場・駅前周辺の土地などを含んだ約3万3,000平方メートルの区画だ。これらは公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(万博協会)が所管している。
万博協会は1日に約22万7,000人が会場を訪れると試算し、半年間の開催期間中で約2,820万人が来場するとソロバンを弾いている。駅補完施設を有効活用すれば、経済効果は計り知れない。
万博協会は施設を整備するノウハウを有していない。そこで万博協会は、大阪市に整備事業の事務を委託した。事務を委託された大阪市は、駅補完施設の工事を請け負う事業者をプロポーザル方式で募集した。
駅補完施設の入札前見学会には数社が参加したものの、入札には一社も参加しなかった。こうして入札は不調に終わる。この入札の経緯だけでも夢洲駅が宝の持ち腐れになってしまったわけだが、そもそも大阪市が公費を投じて整備する予定だったのは、駅補完施設のうち約2,000平方メートルに過ぎない。残りの2万9,000平方メートルは、特に整備される予定はなかった。そして、そのまま手付かずの状態のまま万博は開幕した。
万博の玄関口ともいえる夢洲駅の駅補完施設が手付かずの状態で万博を迎えたことは、夢洲エリアの前途が決して明るくないことを示唆している。
2025年秋まで持ち越される判断
そして、それは思わぬ形で露呈する。万博開幕後の4月22日夜、大阪メトロ中央線が車両故障によって運転を一時見合わせる事態が発生した。夢洲にアクセスできる唯一の鉄道が不通になったことで、夢洲は孤立状態に陥った。夢洲駅は万博会場の東ゲート前に位置し、西ゲート側にはシャトルバスが発着している。中央線が不通になってもシャトルバスに乗れば夢洲から移動はできる。しかし、鉄道とバスとでは輸送力に歴然とした差がある。とても万博の来場者をシャトルバスだけで輸送することはできない。
ゴミの最終処分場だったことを考慮すれば、夢洲に交通機関が整備されていないことは仕方がない面もある。しかし、万博の会場地に決まったなら話は別だ。万博の開催にあたり、大阪府や大阪市は交通を整備する責務が課せられる。
それは単に来場の利便性という問題だけではなく、混雑を緩和することで来場者の安全を確保するという意味も含んでいる。
大阪府・大阪市が、夢洲にJR桜島線と京阪電鉄中之島線の2路線も延伸させる案を描いていた。延伸を実現した中央線と合わせれば、夢洲には3路線が整備される見込みだった。これら3路線が整備されていれば、万博の来場者が交通面で不便を感じることはなかっただろう。
3路線は閉幕後に整備されるIRの足としても機能することになるが、JRと京阪は採算面から夢洲への延伸を渋った。2路線を延伸するか否かの判断は2025年秋まで持ち越される。
交通アクセスが整備されていないのに多くの人が集まることはない。しかし、人が集まらない場所に莫大な費用を投じて交通アクセスを整備することもできない。それは万博というビッグイベントでも変わらない。
鉄道は地域開発を支える原動力でもある。それは、いまさら説明するまでもないだろう。夢洲駅タワービル計画や駅補完施設といった夢洲駅のドタバタをみると、閉幕後に整備されるIRも想定以上の厳しい船出になることが予想される。
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