やっぱり“投資より貯蓄”? 55歳以上向け定期預金にシニア殺到…利用者に聞くリアルな懐事情

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 4月23日、岸田前総理が会長である「資産運用立国議員連盟」が石破総理に提言した「プラチナNISA」が注目を集めている。シンクタンクの日本総合研究所のまとめによると、2024年6月末時点の日本の家計金融資産は2212兆円で、そのうち6割にあたる約1400兆円は60歳以上が保有しているのだという。

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5年もの円定期に応募が殺到している

「人生100年時代」において、老後に向けた資産運用の重要性がさかんに説かれる昨今、プラチナNISAがその一助となる可能性はある。一方で、高齢者の持つ莫大な“埋蔵金”を投資に振り向けることで、日本株の底支えを図りたいという政府の思惑も透けて見える。

 ただ、特にバブル崩壊を目の当たりにした高齢者には、「損をしたくないので投資はしない」という意識の人が多いとされる。また、時間を味方にすることでリスク分散をする「長期分散積立投資」も、高齢者には不向きな側面がある。

「リスクを取って資産を増やすよりも、元本保証の範囲内で資産運用したい」

 シニア層のそうしたニーズの強さを裏付ける現象が、ネット銀行のリリースした商品を巡って起きていた。auじぶん銀行が4月11日から募集を開始した「アクティブシニア円定期」に申し込みが殺到しているのだという。

 この商品は55歳以上で、預入金額100万円以上の顧客を対象にした5年ものの定期預金で、主に退職金の運用を念頭に置いた商品だという。金利は“ネット銀行最高水準”という年1.05%。

 仮に1000万円を預け入れると、5年後には約1041万8000円(税引き後)になって返ってくる計算になる。

トランプショックも追い風に

「対象年齢を区切った上での5年もの円定期は、当行で初めての取り組みでしたが、大きな反響を頂いています。5月31日までの期間限定キャンペーンなのですが、開始から2週間の4月23日の時点で、既に目標の預入金額の110%を集める状況となっています」(auじぶん銀行の担当者)

 目標の具体額は非公表だが、数百億円にのぼる規模だといい、

「決して控えめに設定した目標額ではなかったので、それだけにビックリしています」(同)

 低リスクの資産運用先として、円定期預金と比較対象になりやすいのが、個人向け国債だ。こちらは月毎に金利が変動するが、4月は5年満期の金利が0.95%となっている。

「アクティブシニア円定期」が同期間の個人向け国債の金利を上回っていることも、運用先として積極的に選ばれている理由と言えそうだ。

 ただ、担当者はこうも分析する。

「トランプ関税による株価の乱高下で、低リスクの金融商品に目を向ける方が増えたことも、“追い風”になったと感じています」(同)

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