「天罰は受けるよ。そういう時が来てるんだよ」 フォーリーブス「北公次」がジャニー喜多川氏に向けて放った“愛憎半ばする複雑な感情”

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 コラムニストの峯田淳さんが綴る「人生を変えた『あの人』のひと言」。日刊ゲンダイ編集委員として数多くのインタビュー記事を執筆・担当し、現在も同紙で記事を手がけている峯田さんが俳優、歌手、タレント、芸人……第一線で活躍する有名人たちの“心の支え”になっている言葉、運命を変えた人との出会いを振り返ります。第13回はフォーリーブスのリーダーとして活躍、いち早くジャニーズの闇に光を当てていた北公次さんです。

「悲しいよね」

「天罰受けるんだよ」――。

 ジャニー喜多川氏(享年87)と、ジャニーズ事務所出身の中居正広氏(52)による性加害問題は大きな波紋を呼んだ。ジャニー氏の問題は2023年に発覚したが、強大な「ジャニーズ帝国」関連の影の部分がここまで炙り出されることを誰が想像しただろうか。

 そのジャニー喜多川氏に「天罰受けるんだよ」と言い放ったのは、ジャニーズ事務所のトップアイドルグループ「フォーリーブス」のリーダー、北公次(享年63)だった。30数年後、その北の言葉が現実になる。

 最初に説明しておくと、北はグループ解散前から覚醒剤に手を染めており、79年4月に麻薬取締官事務所(当時)に逮捕された。北自身、「俺だって悪いことして(天罰を)受けたよ」と88年に発売したビデオで語り、その流れで怒りを込め、ジャニー氏に言及したのが冒頭の言葉だった。

 2012年に肝臓がんで他界した北本人に取材する機会は、残念ながらなかった。それならと、北を支えた関係者に取材し、「北公次はこうして逝った」というタイトルで連載記事を書いた。

 書き出しは「花輪のひとつぐらい贈ってくれてもいいのに」。

 09年にフォーリーブスのメンバーだった青山孝史(享年57)が他界した。その葬儀に参列し、祭壇を見た北がこう呟いたそうだ。ジャニーズ事務所からは花輪どころかお悔やみの言葉もなかったという。

 北は、寂しげに関係者にこう語った。

「悲しいよね」

 88年に出した自著『光GENJIへ』では、ジャニー喜多川氏について、例えばこんな記述がある。

「今まで北公次がかわいがられてきたのもひとえにジャニーさんとの(特別な)関係があればこそと割り切ってきたおれは、もうこのへんで二人の特殊な関係を断ち切ろうと決心した」

ジャニーズの闇を暴いた

 フォーリーブスは12年間活動し、78年にグループを解散。その後、4人のメンバーはバラバラに。カリスマ的な人気だったものの、事務所を離れた北は自身のスキャンダルもあり、放り出されたも同然だった。

 一旦は故郷、和歌山・田辺の水産加工会社に就職して、肉体労働の日々を送る。復帰の機会を窺い、紆余曲折を経て、88年に出版したのが『光GENJIへ』だった。

 しかし、「ジャニーズの闇が暴かれた」と話題になったものの、テレビを始めとするメディアへのジャニーズ事務所の影響力は絶大で、どこも取りあげてくれない。そこで翌89年に発売されたビデオで悔しさをぶちまけた。

「ジャニーにも(姉の)メリー(喜多川)にも考えてもらいたいことは20年間、まだ同じことを繰り返している……ジャニーズ出身の連中が辛い思いをしている」

「売れなくなったら、お前ら、邪魔者扱いだよ。ジャニーズ(グループ名)とかフォーリーブスとか、はっきりいって俺も邪魔者扱いだろ」

「同性愛が悪いとかそんなこと言ってねえよ。それはしょうがない。だますのはよくないっていってんだよ。その子供だけじゃなくて親たちまでだましてさ」

 そして、ラストはこんな具合だ。

「天罰は受けるよ。そういう時が来てるんだよ。わかるかジャニー、メリー。どんだけひどい目にあわせているかわかるか。フォーリーブスだってジャニーズだって、今もジャニーズ事務所の柱一本になってんだよ。俺はお前らと喧嘩別れしたけど、辛い思いをして別れたヤツはどうするんだよ。俺は戦うよ」

 実際のビデオではもっと激しい言葉が並ぶ。

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