「偶然似た絵を描いただけ」で処分は「違法で無効」 東京地裁が「院展」に220万円の賠償命令 勝訴した画家は「今も村八分状態が続いています」

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周囲から聞こえてきた「破門された」

「昨年の『秋の院展』には気力を振り絞って出品することができたのですが、記事が出た後、『あれだけ長年世話になってきた組織や仲間を批判するなんて』といった批判が強まった。『組織に盾付きながら出品し続けるのはおかしい』という声も聞こえてくるようになり、事実上、今年の春の院展には出品できなくなってしまいました。最近は“もう梅原は破門になった”と言われていると聞いています」

 だが、記事についたコメントには勇気づけられたという。ほとんどの人が2枚の絵を見比べた上で、「これを盗作と言うのはおかしい」と日本美術院側を批判したからだ。

「嬉しかったです。とても励まされましたので、コメントしていただいたみなさんには感謝でいっぱいです。ただ、やはり判決が出るまでは不安で仕方なかった。もし敗訴してしまったらこの先どうなってしまうんだ、やっぱり裁判なんて起こすべきじゃなかったと考えてしまう自分がいました」

後進のためにも誤った判断だったと認めてほしい

 法廷でも主張の正当性が認められ大手を振って歩けるようになったが、日本美術院という“ムラ社会”の中で名誉が回復されるかどうかについては不安は残るという。

「日本美術院にはどうかこの判決を受け入れてほしい気持ちです。同じような対象を描く場合、構図が似通ってしまうことはよくあること。富士山を描けば似通った絵が出てくるのと同じで、今回は偶然にも、2人ともフレアスカートを履いて座っている平凡なポーズの女性を対象にしてしまっただけの話なのです。似ているだけで問題視されてしまうならば、もう誰も自由に絵を描けなくなってしまう。後進のためにもどうか自分たちが誤った判断を下してしまったことを認めてほしい」

 判決を受けて「再び絵を描く気力が蘇ってきた」とのことで、昨晩は久しぶりにアトリエに篭ったという。

 日本美術院側にも取材を申し込んだが、「まだ判決について検討している最中で、コメントできません」との回答だった。

 関連記事【日本画の最高峰「院展」元理事が告発「理事会に“盗作作家”の濡れ衣を着せられた」「偶然構図が似ただけなのに」】では、トラブルの“元凶”となった「後輩画家」の訴えや、理事会が梅原氏の訴えを聞き入れずに一方的な判断を下した経緯、理事会メンバーにいた37年前『写真パクリ騒動』を起こした“いわくつきの画家”などについて、前後編にわたって詳しく伝えている。

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