「子どもの姓」を決めないと結婚できない? 「選択的夫婦別姓」立憲の法案が“憲法違反”と指摘される理由とは

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“国民民主の離反”や世論調査に焦りも

 立憲の方針変更の背景には、選択的夫婦別姓導入をめぐる野党の足並みが揃わないことも影響している。日本維新の会は、吉村洋文代表が「旧姓の通称使用に法的根拠を持たせる」との立場を明確にしている。また、2022(令和4)年に立憲とともに別姓導入の法案を国会に提出した国民民主党も今回は「選択的夫婦別姓制度の問題は政局の道具にすべきではない」(榛葉賀津也幹事長)として慎重だ。

 加えて、世論調査も単純に賛成か反対かを訊く2択ではなく、具体的な対応策を尋ねる3択の調査だと、「同姓維持」を原則とする意見が圧倒的だ。例えば、読売新聞が今年2月に実施した3択の調査では、選択的夫婦別姓に「賛成」が27%だったのに対し、「夫婦は同じ名字とする制度を維持しつつ、通称として結婚前の名字を使える機会を拡大する」が46%を占めた。「今の制度を維持する」とする現状維持派の24%を含めると、夫婦同姓を原則とする意見が7割を占めた。

 立憲が民法改正案を決めた今月8日、「選択的夫婦別姓実現本部」の本部長を務める辻元清美代表代行は報道陣に「批判や懸念を考慮した」と語った。現状の劣勢を挽回するためには、子どもの姓の決め方を変更して「兄弟姉妹の一体感が保てる」とする融和的なイメージをアピールするしかなかったのだろう。立憲の関係者は「これで公明党や自民党の別姓派とも連携しやすくなった」と語っており、さっそく15日には辻元代表代行が自民党の「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」の会長代行である衆院議員の土屋品子氏に面会し、新しい別姓法案の要綱を手渡している。

「子どもの姓を決めないと婚姻届けが受理されない」制度が受け入れられるのか

 だが、「婚姻時に子どもの姓を決める」ことが義務づけられると、子どもの姓を決めない男女の婚姻届けは受理されない。結婚しようとする男女はすべて、生まれるかどうかも分からない子どもの姓を事前に決めることを強制されることになる。

 制度が理不尽だとして結婚を選択せず事実婚を続ける男女が出ることも考えられるし、健康上の理由で子どもを産むことが難しい女性や不妊治療を続ける夫婦にとっては、「生まれることを前提」に子どもの姓を届けることが絶えず精神的な重圧としてのしかかってくることが想像できる。

 こうした事情はマスコミが報じないため、国民にはあまり知られていないが、そのこと自体が危険ですらある。筆者はこれまで『夫婦別姓に隠された“不都合な真実”』(明成社)を出版するなど夫婦別別姓の問題点を追及して来たが、とりわけは左派系のマスコミは「30年も議論してきていまだに夫婦別姓制度が導入されていないのは理不尽だ」と繰り返すばかりで、この制度の詳細まで議論しようという姿勢がない。「思考停止」状態に陥っていると言ってよいだろう。

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