映画「スピード」の元ネタ「新幹線大爆破」が50年ぶりにリブート JR東日本が特別協力した理由とは
乗客にも視点が
原作では主演の故高倉健を始め、宇津井健、千葉真一、丹波哲郎、田中邦衛。そして現在も活躍する北大路欣也(82)ら、当時のオールスターが出演。さながら“男祭り”ともいえる、かな~り濃い作品となった。
一方の今作で、草なぎ以外に役名が発表されているキャスト陣は以下の通り。主人公の後輩の車掌役には若手の有望株・細田佳央太(23)。原作では千葉が演じた運転士役にのん(31)。乗客のインフルエンサー役で要潤(44)、同じく乗客の国会議員役で尾野真千子(43)、そして原作では宇津井さんが演じた新幹線指令所の総括指令長役を、昨年ネトフリで配信され大ヒットした「極悪女王」にも出演した斎藤工(43)が演じる。
「原作は最初から高倉が主犯だとわかっており、犯行グループがなぜあのような行動に至ったのかを、高度経済成長による“暗部”も交えながら描かれました。結果、犯人グループ側にもドラマを与え、感情移入を狙った演出も相まって高評価につがなりました。それに対して、今作は途中で犯人があるきっかけでカミングアウトするまで、主人公の草なぎさんも含めて、誰が犯人なのかがまったく分かりません」(同)
他にも、犯人から要求された身代金1000億円を集める方法は、ネット社会ならではと思わせるというし、
「原作では新幹線内の乗客が“その他大勢”のような感じでしたが、今回は乗客にも見せ場があります。役名が明かされているキャスト以外には、昨年配信され大ヒットした『地面師たち』などで今やネトフリ作品の常連となったピエール瀧(58)、今や名脇役となった松尾諭(49)、歌舞伎俳優ながら映像作品に引っ張りだこの坂東彌十郎(68)ら、豪華キャストがそろっています。彼らがどんな役を演じるのかも、注目です」(同前)
大ヒットなるか…
原作では、犯人との交渉の傍ら、巧妙な作戦を仕掛けて爆破を阻止しようとするもことごとく失敗。打つ手がなくなり、爆発による被害が少ない山口県の田園地帯で列車を停止させて爆破することが決まるなど、とにかく観客を飽きさせないスリリングな場面が続いた、救援車を並走させて酸素溶接機一式を新幹線に送り込み、爆弾上部の床を開け、コードを切って爆弾を解除することに成功。しかし、そこからまた物語が展開された。
「当時とは運行状況や安全管理の方法もまったく変わっています。そこで今作では、最新技術により乗客の安全確保や爆破を阻止するための作戦が展開されます。ただ、原作の大ファンという樋口監督だけに、原作へのオマージュが至る所に見られ、『ここが原作とつながっていたのか!』と気付かされることになります」(映画担当記者)
75年版を観た人にとっては、実に感慨深い作品に仕上がっているという。
原作は宣伝不足もあって、当時では破格の製作費5.3億円をつぎ込んだものの、配給収入は3億円と興行的には大失敗した。しかしその後、フランスで公開されたところ異例のロングランヒットを記録。さらに、映画雑誌「キネマ旬報」(キネマ旬報社刊)では2002年7月のDVD発売にあたり、「和製パニック映画の最高峰」と紹介されるなど、後年、評価が高まることになった。
「当時、海外では新幹線の存在が知られていなかったにもかかわらず、まさかのフランスでのヒット。しかし、今や新幹線に乗ったこともある外国人は多いので、日本の作品がなかなかヒットしないネトフリの海外ランキングでも上位に食い込むかが注目されます。そして、天国の高倉や千葉は、原作からのあまりの進化に驚くことになるのではないでしょうか」(同前)