いまこそフジに学んでほしい…とにかく深い「萩本欽一」のヒット哲学 「番宣番組はやらない」「“面白いこと”と“面白そうなこと”は違う」の真意とは

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「嫌だ、嫌だと言いながら、楽しそうにやるのが可笑しい」

 これも、現在でも通じる「欽ちゃんの教え」だという。出演者が活き活きと取り組むより、嫌がることをする方が画になるし、面白くなるというのだが、ここで肝心なのは「嫌がる」というのは、嫌がる「芝居」であるということ。本当に出演者が嫌がっていたら、視聴者もさすがに「そんなに嫌なら止めればいいのに」と思ってしまう。

〈例えば、『ひょうきん』で、片岡鶴太郎さんがたけしさんから、アツアツのおでんを食べさせられるコーナーがありました。あれは、鶴太郎さんの、「熱い! イヤだ! やめて!」と見せる「芸」があるからこそ成り立つものです。つまり「熱い」を演じる(リアリティのために、ある程度は熱くなっていますが、それ以上の熱い)ボケがうまいからこそ、ツッコミ役のたけしさんたちが、次々とおでんを食べさせることで面白く映るのです(略)最近の芸人さんはこうしたボケの腕がない。そうすると(略)テレビマンたちは、本当に熱いお湯を入れたり、熱い食べ物を出したりする〉(同)

 その様子を見せられたら「イジメを助長する」とか「弱い者イジメにしか見えない」という抗議が局に殺到するのも当然だろう。
 
 萩本は視聴率(数字)について、こう語っている。

「僕の数字の哲学は、ポスターを作らない、番宣番組をやらないこと。テレビは視聴者が探す楽しみがある。宣伝しないと、番組を見て面白いと思った人が周囲に口コミで広めてくれる」(朝日新聞2015年5月9日付夕刊)

 ところで連日、ネットには多くの動画があげられるが、最近、注目を集めたのが生放送中の番組で、ディレクターが演者に対し、

「うるせえな、バカヤロウ!」

 と笑顔ながら、キレる動画だ。番組は1985~87年にフジテレビ系で放送された「夕焼けニャンニャン」。キレているのは、水曜日担当ディレクターで、フジテレビ前社長の港浩一氏(72)。演者はとんねるずで、先ごろ食道ガン闘病を公表した石橋貴明に、港氏が「やっぱり地方の女はいいよな」とよく言っているなどと、イジられたことに対しての反応だ。

「フジテレビの“黄金時代”ではありますが、いくらなんでも生放送中に、タレントに向かってバカヤロウなんて……。また、下ネタで港さんをイジっていますが、今の時代では考えられないですね」(番組制作会社社員)

 最後に、これも萩本が現場でよく言っていた言葉でしめくくりたい。

「周りをよく見て。“本当に偉い人”と、“偉そうな人”は違うんだよ」

デイリー新潮編集部

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