「ソフトバンク」悪夢の開幕ダッシュ失敗…主力離脱よりも気になる「第二の千賀」「第二の甲斐」が現れない“育成システム”への大いなる疑問

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 今の季節、プロ野球では「春の珍事」という言葉がよく使われる。下馬評で苦戦が予想されていた球団がスタートダッシュに成功すると「春の珍事か!?」と取り沙汰される。数多の具体例があるが、ここでは2002年の阪神をご紹介しよう。星野仙一氏が監督に就任しての1年目のシーズン。開幕7連勝で虎フィーバーが炸裂したが、結果は10年連続負け越しのBクラス。虎党からはケガ人が続出した不運を恨む声が漏れた。

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 今季の開幕ではソフトバンクの順位が春の珍事かと話題を集めた。ただし、こちらは本来の意味とは正反対。パ・リーグの優勝候補に挙げられながら、スタートダッシュに失敗してしまったのだ。担当記者が言う

「ソフトバンクの開幕はロッテ戦を、まさかの3連敗で始まりました。次の日本ハム戦も1勝1敗と苦戦し、4月4日の西武3連戦の初戦は0−6の完封負けで12年ぶりの単独最下位という不名誉な記録を達成したのです。原因の一つとして、2002年の阪神と同じようにケガ人が続出したことが挙げられます」

 先述した02年の阪神は矢野輝弘(現・燿大)、赤星憲広、片岡篤史などの離脱が痛手となった。一方、今季のソフトバンクは近藤健介、柳田悠岐、栗原陵矢と、クリーンナップを担う強打者が相次いで欠場する異常事態に陥っている。

 しかしながら野球ファンの受け止め──はっきり言えば同情の声──を見てみると、阪神と違ってソフトバンクには厳しい意見が多い。

「ソフトバンクは金満球団というイメージが定着しています。豊富な資金力で4軍まで運営し、『育成のソフトバンク』、『分厚い選手層』はソフトバンクの看板と言えます。そんなチームなら、たとえ主力選手がケガで離脱したとしても、すぐに若手が穴を埋めるだろうと考える野球ファンが多いのです」(同・記者)

育成から強奪へ

 ところが、である。まだ開幕したばかりとはいえ、近藤、柳田、栗原のお株を奪うような若手が登場していない。むしろ未来の4番候補と言われて久しい砂川リチャードは2軍落ちしてしまった。そのためソフトバンクのファンは「何のための4軍制度だ」と不満を爆発させ、アンチは「カネを積んでも勝利は買えない。ざまみろ」と溜飲を下げているというわけだ。

 そもそもプロ野球ファンが「さすが選手層が厚いソフトバンク」と感心していたのは決して昔の話ではない。

 2022年のソフトバンクは藤本博史監督の1年目シーズンだった。チームは開幕8連勝と最高のスタートダッシュを切るも、3月から4月にかけて栗原と柳田をケガで失う。さらに6月には選手が相次いでコロナウイルスに罹患するというアクシデントに襲われた。

 だが、2軍監督など若手の育成に尽力してきた藤本監督は、谷川原健太、野村大樹、渡邉陸などを抜擢してチームの立て直しに成功。福岡県筑後市に2軍の拠点があることから、抜擢組を「筑後ホークス」と命名して話題になった。

 この頃は、まだ「育成のソフトバンク」と野球ファンが評価する時代だった。ところが近年はアンチが増えている。巨費を投じて大型補強を繰り返し、他球団のスター選手を“強奪”してばかり――そう感じるファンが少なくないからだろう。

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