名門料亭「金田中」社長を覚せい剤&大麻で逮捕 怒鳴る、大遅刻、「肉が厚い」で自腹3万円…料理長が目撃していた“異変”
「大変危険な状態」
日本労働弁護団幹事長の佐々木亮弁護士が言う。
「原則として8時間×5日=週40時間を超えた分、また飲食店など一定の業種で10人に満たない職場では44時間を超えた分がそれぞれ残業の扱いになります。つまり、もし12時間×6日=週72時間の勤務実態であれば、例外なく労働基準法違反に該当するのです」
月の残業時間については、
「19年に施行された働き方改革関連法で、36協定(時間外・休日労働に関する労使間の協定届)を結んで行われる残業は、単月で100時間未満、2~6カ月の平均で80時間以内としなければならないとなっています。月80時間以上の残業はいわゆる『過労死ライン』とされており、100時間を超えると精神疾患の可能性も高まる。大変危険な状態だといえます」
さらに続けて、
「今回のように給与を大幅に下げると伝えておいて退職の意思を固めるよう示唆したのであれば、不法行為である『退職強要』に該当し得ると思われます」(同)
「怒鳴ることはある」
名だたる老舗に、およそふさわしからぬトラブル。当の岡副社長に質すと、
「(山田氏は)管理職として店を任せていましたが、店を刷新するにあたり、いろいろと話し合っていく中で『一緒にやっていけない』となり、悩んだうえで外れてもらうしかないと考えました」
としながら、
「(従業員を)怒鳴るのは、その時の良い悪いがあるわけですから。『これは違うよね』という話に関しては、それはあります。(労基法の)細かいことは分かりませんが、月100時間の残業はないと思いますし、そうした管理も彼がやってくれていたので……。勤務について法規に反しているという認識は一切ありません。有給を取るよう指示もしているつもりで、(山田氏が)有給を取っていないことも把握していませんでした」
専門家は「『知りませんでした』では済まされない」
その上で、代理人を通じて以下のように回答した。
「通知人(注・岡副社長)あるいは金田中グループの労務管理の不適切さが原因となって違法残業が行われているというのは事実に反する指摘です」
が、先の佐々木弁護士は、
「労基法の順守や従業員の健康管理などは使用者の責任ですから『知りませんでした』では済まされません。社長はもちろんのこと、経営陣全体が責任を負うことになる可能性もあります」
そう指摘するのだ。あらためて山田氏が言う。
「歴代の総理大臣が訪れるほどの店を経営しながら、その味や格を支えてきた従業員を蔑ろにするのは、断じて許されないと思います」
政財界では「金田中に行けるようになったら一人前」と言い継がれてきた。そんなブランド力を生む、かけがえのない伝統がいま大いに揺らいでいるのだ。