「捏造インタビュー」はなぜ生まれるのか 「月から夜ふかし」に続きフジテレビも…業界の悪しき体質

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映像切り貼り

 このように、映像の順番を並び替えたり、切り貼りしたりすることで、発言の意味するものを変えることはいくらでもできてしまう。そこに「編集」という作業の恐ろしさがある。

 最近たまたま2件の捏造事件が立て続けに明らかになったわけだが、似たようなことが行われているケースはほかにもあるのではないかと思う。なぜなら、テレビディレクターは常に時間や予算が限られている中で面白い番組を作らなければならないというプレッシャーを抱えているからだ。

 撮影した素材を編集によって面白いものにするということ自体は悪いことではない。ただ、厳密にどこまでが「演出」でどこまでが「ヤラセ(捏造)」なのかというと、その境界は曖昧な部分もある。

 もちろん、今回のケースのように取材対象者の発言の意図を歪めてしまう「0から1を生む」というタイプの捏造は問題外だが、「1を10にする」という程度のことは普通に行われている。

 精神的に追い詰められたディレクターが、その境界を見失ってしまい、捏造行為に手を染めてしまうというのは、決して許されないことだが、あり得ないことではない。

「月曜から夜ふかし」の例で言えば、捏造かどうかという以前に、「中国人がカラスを食べている」という内容自体に国際問題に発展するようなリスクがあることは、放送前の段階でも察知できていたはずだ。その意味では、番組スタッフの間で「面白ければ何でもあり」というような悪しき体質があったのではないかという疑いも出てくる。

 フジテレビ騒動によって、テレビ業界全体に対する世間の不信感が強まっているこの状況で、それに拍車をかけるような不祥事が起こってしまったのは残念だ。真摯な姿勢で番組作りを行い、少しずつ信頼を取り戻していく以外に道はないだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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