「捏造インタビュー」はなぜ生まれるのか 「月から夜ふかし」に続きフジテレビも…業界の悪しき体質
映像切り貼り
このように、映像の順番を並び替えたり、切り貼りしたりすることで、発言の意味するものを変えることはいくらでもできてしまう。そこに「編集」という作業の恐ろしさがある。
最近たまたま2件の捏造事件が立て続けに明らかになったわけだが、似たようなことが行われているケースはほかにもあるのではないかと思う。なぜなら、テレビディレクターは常に時間や予算が限られている中で面白い番組を作らなければならないというプレッシャーを抱えているからだ。
撮影した素材を編集によって面白いものにするということ自体は悪いことではない。ただ、厳密にどこまでが「演出」でどこまでが「ヤラセ(捏造)」なのかというと、その境界は曖昧な部分もある。
もちろん、今回のケースのように取材対象者の発言の意図を歪めてしまう「0から1を生む」というタイプの捏造は問題外だが、「1を10にする」という程度のことは普通に行われている。
精神的に追い詰められたディレクターが、その境界を見失ってしまい、捏造行為に手を染めてしまうというのは、決して許されないことだが、あり得ないことではない。
「月曜から夜ふかし」の例で言えば、捏造かどうかという以前に、「中国人がカラスを食べている」という内容自体に国際問題に発展するようなリスクがあることは、放送前の段階でも察知できていたはずだ。その意味では、番組スタッフの間で「面白ければ何でもあり」というような悪しき体質があったのではないかという疑いも出てくる。
フジテレビ騒動によって、テレビ業界全体に対する世間の不信感が強まっているこの状況で、それに拍車をかけるような不祥事が起こってしまったのは残念だ。真摯な姿勢で番組作りを行い、少しずつ信頼を取り戻していく以外に道はないだろう。
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