女優と敏腕プロデューサーの「密会写真」から35年 「社長辞任」大多亮氏が読み違えたトレンド
大きな注目を浴びた、フジテレビが公表した第三者委員会の調査報告書。
中居正広氏の性暴力問題に関しては、事件当日の直接の関与こそ否定されたものの、女性と中居氏との接点となったこと、業務の延長という認識を持たせたこと、そしてそれらの原因となる企業風土に問題があることなど、かなり同社にとって厳しい内容となったのはすでに報じられている通りである。
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発火点である中居氏はすでに日常を取り戻したようで、自ら高級外車のハンドルを握り、知人の事務所を訪れていた姿も報じられている（「デイリー新潮」4月2日）
一方で、フジテレビ側はいまだ激震の中にいるといえそうだ。
問題発覚当初、港浩一前社長のグダグダな会見と比べて、潔さが一定の評価を得ていたはずの大多亮氏（フジテレビ元専務取締役）についての世評の風向きも、報告書によって変わることとなった。
報告書内で問題認識後の対応が不適切だった旨が厳しく指摘されていたからだ。
結果、大多氏は4日、関西テレビ社長の職を辞することを表明した。報告書で指摘された自身の対応の問題を重く受け止めてのことだという。
トレンディードラマの名プロデューサー
その決断について、ネット上では当然であるといった意見が目立つ。
大多氏といえば、かつては数々のヒットドラマを手がけた名プロデューサー。
「101回目のプロポーズ」「東京ラブストーリー」「ひとつ屋根の下」……名場面、名セリフ、テーマ曲がすぐに浮かんでくる世代の方も多いはずだ。一連の作品は「トレンディードラマ」と称されて一世を風靡したこともある。テレビ史に残る存在の一人と言っても過言ではない。
また、かつて女優・鈴木保奈美との交際が報じられたことでも有名だ。女優と敏腕プロデューサーのツーショット写真は写真週刊誌「FOCUS」に掲載された（1990年）。
出演者との距離の近さは、仕事の面でプラスに働くこともあっただろう。ただ、今回の報告書ではその面での問題点も指摘されている。
「大多氏は、懇意にしている特定の男性有力番組出演者との会合に女性アナウンサーや女性社員を同席させていた事実が確認された。当該会合は遅くとも 2005 年前頃から年に 1～2回程度開催されており、少なくとも19名の女性アナウンサー（退職した者も含む）が参加している。
特に、女性アナウンサーについては、当該番組出演者からLINEで『女子アナの皆様との会、よろしくお願いします！』『新人アナに会いたいですねぇ』等と依頼され、大多氏はこれに応じる形で女性アナウンサーとの会合をセッティングし、また、大多氏からも『新人女子を入れた飲み会も、そろそろ日程決めていかないとね』等と飲み会の開催を呼び掛けている事実が確認された。
当該会合に参加した女性社員及び女性アナウンサーからは、会合に参加した番組出演者との仕事が円滑に進んだ旨述べる者や、自身が参加した会合では特段ハラスメント的な言動もなかった旨述べる者がいる。一方で、当該会合における大多氏や当該番組出演者の会話がいわゆる下ネタ的な性的内容を含んだものであった旨述べる者も多数おり、不快であった旨述べる者もいた」（報告書より）
トレンドに追いつけず
難しいのは、飲み会によって「仕事が円滑に進んだ」という人もいれば、下ネタが不快であったという人もいるという点だろう。よく読むと「下ネタがあった」と述べる者は「多数」いたと書いてあるが、不快感を示した人は、そういう「者もいた」となっている。つまり「下ネタは聞いていたけれども何とも思わなかった」人もそれなりにいたことになる。テレビ局的なノリを共有できる人は疑問を抱かずに楽しんでいたと推察される。
一昔前ならば、下ネタに目くじらを立てるほうがヤボだ、で済んだのだろうが、現代ではそれは通じなくなっている、というのが多くの企業ではすでに常識なのだが、同社はいまだ意識が平成で止まっていたともいえる。
何にせよ、不快に思った人、あるいは違和感を抱いた人は、今回の調査で初めてその気持ちを打ち明けられたのかもしれない。
大多氏からすれば「だったらその時に言ってよ」と思うところだろうが、それを言えない環境だったからこそこういう事態になった可能性は否定できない。
プロデューサーとしての大多氏の代表作の一つは「東京ラブストーリー」。鈴木保奈美が演じるリカが織田裕二演じるカンチに呼びかける、かの有名なセリフも、現代ではセクハラ扱いされかねないものとなってしまった。
世の中のトレンドは目まぐるしく移り変わっている。それにトレンディードラマの旗手ですら気付けなかったということなのだろうか。
