「島田紳助」の話術&最強の「弁護士軍団」 ゴールデンタイムの“お手本”のような番組だった「行列のできる相談所」が終了

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激しい口論も

 弁護士同士で意見が対立したときには、お互いが感情をあらわにして激しい口論が起こることもあった。法律番組でありながら、こうしたユーモアのある掛け合いが生まれることで、視聴者は堅苦しさを感じることなく、楽しみながら学ぶことができた。

 ただ、ここまで述べた「法律エンタメ番組」の枠組みは、途中から徐々に崩れていくことになる。法律問題というテーマだけでは、どうしてもマンネリ化やネタ切れは避けられない。そのため、この番組では徐々に法律とは関係のないバラエティ要素が増えていった。多彩なゲストと弁護士タレントが司会者を囲む総合的なトークバラエティへと変貌していったのだ。

 紳助が司会を務めていたときには、彼のワンマンショーのような形で、テンポの良いトークで笑いを生み出していった。その後、司会が交代してからは、ゲストにスポットが当たるような企画が増えてきた。2021年には番組名から「法律」の文字が消えて「行列のできる相談所」となった。

「行列のできる相談所」は、法律という難しいテーマをわかりやすく伝えるというコンセプトで始まり、個性的な弁護士陣がタレントとして成長していくにつれてバラエティとしての魅力を高めていき、時代に応じて柔軟に内容を変化させながら、多くの視聴者に親しまれてきた。

 コンセプトや司会者が変わっても番組の人気が揺らぐことがなかったのは、時代に合わせて柔軟に企画を変えていき、面白さの本質を見失わなかったからだろう。ゴールデンタイムに放送されるバラエティのお手本のような番組だった。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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