開幕ローテへ瀬戸際「小笠原慎之介」 第2の「今永昇太」と期待も、両左腕の“決定的違い”とは

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似て非なる今永と小笠原

 振り返れば、今永も1年前のオープン戦でメジャーの壁にぶち当たっていた。登板4試合で残した成績は2勝2敗、防御率5.68。それでも3月上旬には開幕ローテーション入りが決まっており、カブスの判断が間違っていなかったことを今永自らが証明した。

 ここで、今永と小笠原の比較をより深めていきたい。2人は同じ日本人サウスポーというだけでなく、体のフレームや投球フォームにも重なる部分が多い。

 ただ、似て非なるのが2人の投じるフォーシーム(速球)である。平均球速自体はほぼ同じで、むしろ今春のオープン戦では小笠原の方が速いストレートを投げ込んでいる。しかし、決定的に違うのがスピンレートである。

 スピンレートとは、ボールの回転数のことで、一般的には1分当たりの回転数をRPM(回転数/分)という単位で表す。

 スピンレートが高ければ高いほどバックスピンが強くかかり、伸びのあるストレートが生まれる。最近のメジャーでは、球速以上にスピンレートを重視している側面もあるほどだ。

 昨季の今永がシーズンを通して記録したフォーシームの平均スピンレートは「2442」。同指標になじみの薄い日本ファンはこれが高いのか低いのか判断しづらいところだが、これは昨季フォーシームを1000球以上投じたメジャー42投手の中で5位だった。

 つまり、球速ではメジャーの平均に遠く及ばない今永が、強打者から三振の山を築けていたのはスピンレートに秘密が隠されていたというわけだ。球持ちのいい今永のフォームから繰り出されるフォーシームは、打者が想定する以上の“ホップ”を見せていたことになる。

小笠原のスピンレートも悪くはないが……

 一方で、小笠原のフォーシームはどうか。

 先述の通り球速自体は今永のそれとほぼ同じだが、回転数は今永と比べるとかなり少ないのが現実だ。

 たとえば、小笠原のオープン戦3度目の登板となった6日のマーリンズ戦。この試合で小笠原はフォーシームを20球投げたが、平均スピンレートは「2247」だった。一見すると、昨季の今永がマークした「2442」と大きな違いはないようにも映るが、先述したランキングに当てはめると、メジャー42投手の中で28位相当。決して悪くはないが、やはり今永のそれと比べると威力に欠けると言わざるを得ないだろう。

 いきなり15勝を挙げた今永と同じサウスポーというだけで比較されるのは酷かもしれない。それでも小笠原は高校時代に世代の頂点に立ち、プロ入り後も度重なるケガを克服してきた。

 新たな環境に適応さえすれば、大きく飛躍する可能性は十分あるはずだ。開幕ローテーション入りを果たすためにも、21日のメッツ戦で猛アピールするしかない。

八木遊(やぎ・ゆう) スポーツライター
1976年生まれ。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。

デイリー新潮編集部

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