資産が1億円を超えると世界はどう変わる? 富裕層の仲間入りした編集者が「ロクなことはない」と言い切る理由

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米ドル建ての保険を買いませんか?

 私自身、意地悪な人間ではないため、こうして営業電話をかけられ続けるとその数ヶ月後には実際に担当者と会うこととなる。そして、やっちまった……。敵は何回かの面談の末、私の嗜好を完璧に把握する。

 私自身は保守的な人間であるため、「自分が安心できるようなモノ以外には投資はしない」と伝えた。そして、その際具体的なモノを挙げたが、それは米ドルである。これまでの51年間の人生でなんとなく米ドルと日本円の関係性については分かっていた。過去に円が89円の時に5000万円分米ドルに換え、120円になった時に売って1741万円儲かった成功体験があるからだ。

 そうした中、日本円が141円の時に銀行員は「米ドル建ての保険を買いませんか?」と言ってきた。この時、「一度ここで買ってしまえばこのウザい電話攻勢も来なくなるだろう」、とばかりにエイヤッ! と5000万円分のドル建て保険商品を買った。これは、米の金利は保証されたうえで、換金する際の為替に従い解約できるものである。私は5000万円が20%上がる6000万円になったところで解約するよう依頼をした。

 まぁ、私にとっては幸いにすぐに1ドル=158円に到達したため、すでに黒字化し、後は6000万円になるのを待つばかりではあるが、とにかく富裕層(笑)になると、このような余計な勧誘が増えるのである!

ただただ面倒

 さらには系列の証券会社にも個人情報が筒抜けで、そこからも営業電話が頻繁にかかるようになる。結局彼らも会社の推奨商品を売りたいのと、個人のノルマを達成するために富裕層を利用しているだけなのだが、しつこく営業をすれば引っ掛かる私のような者もいる。

 いや、当然私が「投資には興味ありません!」とピシャリと言えばいいだけなのだが、さすがに勧誘のプロ。いつしか私に5000万円を支払わせる話術を持っているのだ。というわけで、皆さん、「富裕層」という言葉に憧れるかもしれないが、ロクなことはない。ただただ面倒なだけである。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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