「1年で潰れる」と言われて「日刊ゲンダイ」は50年…寺田俊治社長が激白 最大の売り“激烈な一面見出し”は「私が1人で付けています」
コロナ禍が転機に
そう強調する寺田社長には、今から41年前、日刊ゲンダイに入社した当初から抱いていた「明日潰れるかもしれない」という危機感が、今も根強くあるという。それを最も強く感じたのが、社長に就任して4年後、日本全国がコロナ禍に覆われた2020年だった。
「俺が社長になって間もなく、世の中はコロナでしょう。この時は潰れると思った。誰も電車に乗らないし、駅にも行かない。創刊時に国鉄がストをやった1975年と一緒ですよ」
ところが、このコロナ禍が逆に、部数回復の転機となった。
「かえって紙が売れたんだよね。電車に乗る主要読者層のサラリーマンがやることがなくなって。そこで、社長になって初めて特別号を作ったら、これもバカ売れした」
そう言って、寺田社長は2020年4月23日、1部250円で発行した「新型コロナ完全ガイド保存版特別号」を広げた。1面に「熱、咳その時どうする」「症状、相談、検査、入院、投薬のすべて」と、不安に駆られた読者が手に取ってみたくなる記事が並んでいる。
「今はこういう特別号を年に12回、毎月出してます。いろんなジャンルで、この特別号やムックを作ることを念頭に置き、紙の連載やDIGITALの企画を考えてる。紙だけでなくマルチに展開していこうと、そういう基本方針を立ててね。例えば、経済評論家の荻原博子さんに、まずDIGITALで有料プライム会員向けに『老後に備えるお金の基礎知識』というオンライン講座をやっていただく。その内容を文字起こしして、紙用にも1個の特集記事を作る。さらに「物価高を生き抜く!お金の基礎知識」という特別号(今年6月21日発行、Kindle版あり)でも使っていく。つまり、2次利用、3次利用ですよ」
猫と競馬
特別号で一番のヒット商品は2021年から発行を始めた「日刊ニャンダイ」。猫に特化した猫好きのための情報、画像、愛猫家の寄稿を詰め込んだものだ。創刊以来“政治紙”として売ってきた日刊ゲンダイがこんな特別号を出したことには、ある意味、東スポが餃子を売り出した以上の違和感があった。ところが、意外にもこれが大ウケ。毎年発行を続けるほどのヒット商品となり、今年で4回目を数える。
「好評ですね。これを出すのは毎年2月22日前後。その日は猫の日なんだよ。ニャンニャンニャンっていう日(笑)。ニャンダイから派生したカレンダーだとか、そういう商品も作ってます」
猫が特別号の稼ぎ頭なら、通常号の売り物の主要コンテンツは競馬である。「夕刊フジの休刊を機に、フジの愛読者だった方々に言いたい」と寺田社長はこうアピールする。
「一回、騙されたと思って日刊ゲンダイを読んでみてほしいんです。読んでみれば、いいな、と思えるところがあるんじゃないか。ウチの独自の競馬の見方とか、競馬専門紙とのコラボの面白さだとか、興味を持っていただける情報や中身があると思いますから」
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