ウルトラマン“フジ隊員”の華麗なる変身 寂聴さん推薦で芸能界へ、「Q」の衣装は自前…15年間の休業を経た現在は
コーディネーターの立場へ
桜井さんは『ウルトラマン青春記~フジ隊員の929日~』(1994年)に続き、『ウルトラマン創世記』(2003年)を上梓。この書を執筆していた折、飯島監督が体調を崩していたこともあり、両書を発売した小学館に、飯島監督に話を聞いてまとめた本の出版を打診した。出版が決まり、飯島監督にインタビューをしていたところ、飯島監督は桜井さんにこう語りかけたという。
「俺の職業、知ってる?」
もちろん「監督でしょ」と答えた桜井さんだが、飯島監督は「本ではなく映像にまとめて残せ」という意味で、桜井さんにこの言葉を投げたのだった。曲折はあったが、2003年末にDVD作品「ウルトラの揺り籠~実録ウルトラQウルトラマン誕生秘話~」という形となって思いは実現した。
この作品では飯島監督をはじめ、特技監督の高野さん、脚本家の上原正三さん、監督の梶田興治さんが出演。貴重な当時の証言を得て、桜井さん自身は「ウルトラマン」シリーズを伝えていく“伝道師”としての役割に開眼する。コロナ禍になってからは、YouTube番組「ロコトーク」で当時の関係者を招き、往時の雰囲気や出来事を伝えるトーク番組を配信した。
早くも重版出来となる好調ぶり
TVドラマ「ウルトラマン」シリーズはおおよそ1本が25分程度だが、それを表現するために費やされた時間は、もちろんそんな短さではない。
「完成作品まで行くのに、どこまで大変だったのか。撮ったのにどれだけカットされたものがあったのか。その山に登るまでが大変なんだよ、ということなんです。大先輩の佐原さんは映画本編でも主役を張っていた方。それなのにテレビの世界へ来て、みんなを引っ張ってくれたのは、英二監督に『健坊、頼むね』と言われたからだと後に聞きました。そういうことを残さなきゃ、と思って」
一時は「ウルトラセブン」の作品人気の高さから、桜井さんの言葉を借りれば「(ウルトラ)Qや(ウルトラ)マンがないがしろにされていた時期もあった」という。だが、「Qやマンがあってこそセブンも他の作品もある」という思いが、今回の共著にもあふれている。
その思いが読者にも届いたか、早くも重版出来となる好調ぶり。「まだまだ書きたいことはありましたけど、67作品もあるので」と語る。「ウルトラマン」シリーズの原点が今後もさらに解き明かされる日を心待ちにしたいところだ。
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