国が初の実態調査に乗り出した「身寄りなき遺体」急増問題 名古屋市で「遺体が3年以上放置」されたミステリーの“真相”とは

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 ついに国が本腰を上げた「身寄りなき遺体」の処理問題。「独居高齢者」の増加とともに、その数は年々増え、自治体側の負担も無視できないレベルに達しているという。ところが、引き取り手のいない遺体が荼毘に付されるまでの保管状況については“深い闇”に包まれた部分も――。

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 朝日新聞は5月20日付の紙面で、身寄りのない遺体が全国で急増している問題を受け、厚生労働省が初の実態調査へと乗り出す方針であることを報じた。

 孤独死や病死など死亡にいたる経緯はさまざまだが、身元は判明しているものの引き取り手が見つからない遺体について、墓地埋葬法では死亡地の市町村長が火葬や埋葬を行うことと定めている。

「火葬を経た遺骨は各自治体の合葬施設などに埋葬されるケースが一般的ですが、厄介なのが火葬前に行われる遺体の引き取り手を探す作業。病院や警察から連絡が入ると、自治体側はまず死亡者の戸籍を取り、家族や親族の有無および所在を確認します。しかし、やっと探し当てた親族に引き取りを打診しても断られるケースは珍しくない。引き取り手のいないことが確認されて初めて、自治体側が火葬などの準備に入ることになります」(関東圏の自治体関係者)

 親族調査が難航するケースも多く、通常、火葬までの期間は「2か月から半年程度を要する」(同)という。ところが2022年、名古屋市(愛知)で引き取り手のいない遺体を「最長で3年以上」も“放置”していたことが発覚し、大きな話題となる。

「3年以上保管」の謎

 名古屋市の担当者が話す。

「区の監査によって、21年12月時点で“親族調査が終了したのに1年以上、火葬されなかった”ケースが6件あり、最長は『3年以上』だったことが判明した。ご遺体はいずれも葬儀社に保管されていたのですが、そのことを職員が失念していたことなどが主な理由でした」(名古屋市区政課)

“放置”を生んだ背景の一つに「身寄りなき遺体」の火葬件数の急増が挙げられる。名古屋市が取り扱った14年度の火葬件数は58件だったが、18年度は134件、22年度は256件にのぼった。

「この監査を機に手続きを改正し、火葬までの期間を短縮する運用に改めました。それまでは親族調査の範囲を配偶者や子供、親に加え、姪や甥もふくむ第3順位の相続人までを対象とし、かつ期限も定めず行っていました。そのため親族調査が1年以上経っても終わらないケースが複数報告されていた。現在は調査対象を配偶者や子供(第1順位)にとどめ、所在確認後に手紙を出して、引き取りの意思を2週間以内に回答してもらうようにしています」(同)

 その結果、火葬までの期間は21年度の5.3か月(平均)から、23年度は2.8か月(同)に短縮されたという。しかし、ここで素朴な疑問が浮かぶ。「3年以上」も一体どうやって遺体を保管していたのか――という“謎”だ。

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