福田淳社長の穏健路線で業界に異変…スタート社とTOBEは熾烈な競争を繰り広げるか? カギを握る平野紫耀

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民放は人気アーチストの争奪戦

 TOBE側の追い風はほかにもある。民放のゴールデン帯(午後7時~同10時)に民放の音楽番組が相次いで誕生し、人気アーチストの争奪戦になっていることである。所属芸能事務所がどこかなんて、気にしていられない。

 4月から日本テレビは音楽番組「with MUSIC」(土曜午後7時56分)を始めた。フジテレビでも「ミュージックジェネレーション」(木曜同7時)がスタート。日テレのゴールデン帯でのレギュラー音楽番組は34年ぶり、フジは8年半ぶりだ。TBSも既存の「CDTV ライブ!ライブ!」(月曜同7時)を1時間番組から2時間番組に拡大した。

「今、各局の音楽番組はコア視聴率(13~49歳の個人視聴率)が獲れるアーチストを出演させようと躍起。バックグラウンドとして民放界の深刻な収益停滞がある」(同・大手芸能事務所スタッフ)

 特定の芸能事務所を厚遇したり、排除したり出来るような状態ではない。

「仮に強いジャニーズ事務所が現存していようが、自分たちの思い通りにするのは難しかったはず」(同・大手芸能事務所幹部)という。

競争の行方のカギを握る1人

 ひょっとしたら、旧ジャニーズ事務所の副社長時代に各局トップと深く付き合った滝沢氏は、1年前の退所時点で、民放界の現状を先読みしていたのではないか。頭の良さで知られる人である。

 スタート社は大所帯だが、一般的な芸能事務所になりつつある。一方で小所帯のTOBEは旧ジャニーズ事務所の人材や戦略の一部を生かそうとしている。

 今のところスタート社にTOBEを潰そうとする気配がないので、TOBEが露骨な掟破りでもしない限り、全面衝突にまでは至りそうにない。ただし、タレントづくりのコンセプトが通底するから、熾烈な競争が繰り広げられることになる。

 競争の行方のカギを握る1人はNumber_iの平野だろう。平野は現在、音楽活動に軸足を置いているが、以前から外資系の世界的配信動画会社が極めて強い関心を示している。

 平野がこの配信動画の作品に主演し、世界的にヒットすれば、数では劣るTOBEも存在感が飛躍的に増す。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。放送批評懇談会出版編集委員。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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