【不適切にも】最終回で純子はどうなる? クドカンがドラマに込めた意図を読み解く

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「正しいのはお前だけじゃない」

 クドカンはこうも言った。故・市川森一さんが脚本を書いたTBSの名作ドラマ「淋しいのはお前だけじゃない」(1982年)を引き合いに出した。

「市川森一先生がご存命だったら、(このドラマに)こんなタイトルを付けたんじゃないでしょうか。『正しいのはお前だけじゃない』。自分と違う価値観を認めてこその多様性」(クドカンの公式コメント)

 このクドカンの思いは何度もドラマに織り込まれた。たとえば第9回では市郎の孫でEBSテレビのプロデューサー・犬島渚(仲里依紗)が、部下からパワハラだと告発された。休職処分となった。妊活休みの続く予定の部下に対し、渚が「その週はいないものとしてシフトを組むから」と言ったことが咎められた。

 渚にしてみると、部下への配慮のつもりだったが、相手は発言の真意を酌み取ろうとせず、自分の価値観しか認めなかった。ドラマなのでデフォルメされてはいるものの、似た話は実際にありそうだ。

対話の必要性を訴えた

 クドカンはこの物語の第1回から目立つ形でスマホやコンビニを登場させ、昭和期より現代はずっと便利だと強調した。意図的だろう。なぜなら、現代のほうが幸せだと表現したシーンは1度もない。便利度と幸福度は比例しない。この辺にクドカンの思いの一端が隠れているに違いない。

 第9話で令和という時代に敗れた形になった渚は、疲れた表情で社会学者の向坂サカエ(吉田羊)に対し、「どうでした昭和?」と尋ねる。昭和生まれのサカエは現在、昭和を旅している。サカエはこう答えた。

「なんか全体的にうるさかったな。みんな無駄なことをしゃべるから」(サカエ)

 現代人が静かな理由の1つはスマホを相手にする時間が長いから。加えて自分の発言が咎められることを怖れ、口を閉ざしている一面 もあるだろう。

 サカエのセリフは、今の時代は対話不足だというクドカンの考えを暗喩していた。第1回でもアプリ開発会社社員の秋津真彦(磯村勇斗)がミュージカル場面で「話し合いましょー」と歌った。話し合いが現代社会の諸問題を解決する糸口になるとクドカンは考えている。

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