マサイ戦士の第2夫人になった日本人女性の告白 伝統を守るマサイ族は今スマホで何を見ているのか

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時代の変化と「エウノト」

――ジャクソンさんも「エウノト」に参加された“真の戦士”だったんですよね?

永松「私は2003年に行われたエウノトを観に行き、ジャクソンと出会ったんです。その時の彼は野性味が溢れすぎて、野生動物なのか人間なのか分からない印象を受けました。怖いと思いながら恐る恐る近づき、なんとか写真を撮ってもらいましたが、もう同じ人はこの世にはいません。20年も経つと太っちゃって、すっかり変わってしまいました(笑)」

ジャクソン「戦士時代の私は、7頭のライオンと1頭のゾウを仲間と一緒に仕留めました。けれど今は、野生動物の命を絶つことが政府から固く禁じられています」

永松「ライオン狩りはその以前から禁止されていましたが、家畜を殺された時に“報復”という形で行われていました。今はいかなる理由があっても逮捕されます。そこで、動物を管理する団体とマサイの間で牧畜生活を守るための約束が交わされ、家畜を殺されたら補償金が支払われる仕組みができました。『エウノト』はジャクソンが参加した03年の後、2012年と2021年にも行われましたが、21年の時は誰一人、ライオンを殺していません」

「牛乳が主食」は過去の話に

――野生動物の扱い方以外に、マサイの生活で大きく変わったところはありますか。

ジャクソン「人が増えました。道も公的な学校もできました」

永松「近年のケニアは教育が義務化され、必ず学校に行かなければなりません。それ以前からマサイには、数十年後に牧畜を中心とした生活が成り立たなくなるのではという危機感がありました。そのため、子どもたちに学校教育を受けさせたほうが得策だと考え、自分たちで学校を作っていたのです」

ジャクソン「公的な学校でさらに高い教育を受けることによって、例えば政治家や弁護士、医者になることもできる。そのほうがマサイの生活を守れます。特に私の地域では、将来を見据えて(国の)中央で戦える人間を育てるといった考え方が強いですね」

永松「気候変化もマサイの生活に大きな影響を与えています。雨が降らず草も生えないので砂漠化が進み、牛の乳が出なくなった。昔は主食として牛乳を1日5~6リットル飲んでいましたが、そんな時代は昔の話になってしまいました」

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