「VIVANT」が海外で売れない…「国際的に異例」の設定を日本だけが受け入れた“特殊事情”

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海外のコンテンツ見本市で賞を獲得

「VIVANT」が黒字化を実現するためには有料動画配信で稼ぐか、あるいは海外テレビ局にドラマそのものかフォーマット・リメイク権を売らなくてはならない。

 国内の動画配信については放送中からTBSと資本関係のあるU-NEXTで始まり、好調だった。昨年12月からは世界190以上の国と地域に向けてNetflixでの動画配信が開始された。

 制作側としては高い利益の獲得に自信満々だったはずだ。昨年10月にフランスのカンヌで開催された世界最大級のコンテンツ見本市「MIPCOM」では、番組バイヤーたちが日本の優れたドラマに与える賞「MIPCOM BUYERS’ AWARD for Japanese Drama 2023」でグランプリを獲得していた。

 また、過去には同じTBSの「JIN―仁―」(2009年、2011年)が欧米や韓国、台湾など80カ国・地域に売れた。日本テレビ「Mother」(2010年)もドラマ大国のトルコにリメイク・フォーマット権が販売され、そのリメイク版は40カ国以上に売れた。海外での成功例があったのである。

ベキがテロリストである事実

 しかし、「VIVANT」のNetflixでの動画配信数は平凡の域を出ず、海外へのドラマやリメイク・フォーマット権の販売は実現していない。ここで、このドラマには特殊事情があったことに気づかされる。物語全体に横たわる国際テロ組織「テント」とその首領であるノゴーン・ベキこと乃木卓(役所広司・68)の存在である。

 物語中盤までは謎の組織だったテントだが、終盤で正体が見えた。テントとベキには野心や私欲がなく、それどころか内戦などで家族を失った子供たちを育てていた。まるで慈善家であり、「良いテロリスト」として描かれていた。

 悪玉は国民の幸福を考えぬバルカ共和国。また、公安の潜入捜査員だったベキを捨て石にした元公安幹部の内閣官房副長官・上原史郎(橋爪功・82)だった。

 もっとも、テントとベキが完全な善玉かというと、そうとは言えない。子供たちを養う資金を稼ぐため、世界各地でテロの仕事を請け負い 、破壊工作を行っていた。泣いている民の姿も映された。

 いずれにせよ、ベキがテロリストであるのは動かしようのない事実だった。それを良い人として描くのは国際的に異例。これが「VIVANT」が海外では広く受け入れられない理由と見る。

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