「河野談話はファクトチェックなしで作られた」 元慰安婦の「心証」を基にした談話は破棄すべき、と専門家が指摘

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合意契約を交わした女性のみを受け入れていた

 この結論が間違っていることは、『政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成』を読めばわかる。92年以降、このような慰安婦問題に取り組む過程で、日本政府は膨大な公文書を集めて実態を調査した。その成果がこの資料集だ。

 それらの中には、慰安婦になる女性と親権者が雇用主との間に交わした契約書の雛形がある。また、慰安婦が海外渡航する際、くれぐれも人身売買とか詐欺とかがないように、官憲に慰安婦の契約書や合意書のチェックを厳密にするよう命じた文書もある。さらには、慰安婦を慰安所に迎えるにあたり、これらの文書を保持しているかどうかを現地司令官が厳しくチェックし、保持しない場合は受け入れを拒否するよう厳命した文書もある。

 これらの文書を読めば、強制連行を命じた文書がないのは、焼却処分したからではなく、そのような事実自体がなかったからだ、日本軍は雇用主との間に合意契約を交わした女性だけを慰安婦として受け入れていたのだ、という結論にたどり着いたはずだ。

談話は破棄するべし

 ラムザイヤー氏も私も、この資料集に収録されている公文書をもとに、慰安婦はみな合意契約をしていたことを明らかにした。そして、私は、現在でも、歴史的事実に反する河野談話の破棄を求めている。

 この談話は、政府の公式声明ではなく、当時官房長官だった河野氏がマスコミに話したものに過ぎないという人がいる。だが、河野氏はこの口述記録の中でこれを否定して、「官房長官が公式の記者会見で公式に発言していたら、内閣一体の原則じゃないが、それは内閣の意思として官房長官が言っているということになるでしょう」と述べている。そして、勝ち誇ったように「一旦は否定しかけた安倍(晋三)総理も、アメリカまで行って河野談話のとおりですと言っているんです」とダメ押ししている。たしかに、冒頭で述べたように、日本も世界も、これが日本政府の公式声明であると認定している。

 官房長官談話に過ぎないから公式なものではないという理屈は内輪でしか通用しない。従って、これを破棄し、国民的議論をしたうえで、しかるべき声明文を作り、閣議決定なり、政府決定して、世界に向かって宣言すべきだと考える。

有馬哲夫(ありまてつお)
早稲田大学教授。1953年生まれ。早稲田大学卒。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。メリーランド大学、オックスフォード大学などで客員教授を歴任。著書に『歴史問題の正解』『NHK受信料の研究』など。

週刊新潮 2024年2月8日号掲載

特別読物「元衆院議長『聞き取り』公開で分かった 『河野談話』にファクトチェック無し」より

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