【光る君へ】視聴率は「どうする家康」より苦戦…NHKが低視聴率番組の要因を素直に語らない理由

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世代を問わず楽しめる趣向も

 それが分かっていながら、平安時代中期をあえて舞台に選んだ制作陣の心意気は買える。また、まひろの父・藤原為時(岸谷五朗・59)のダメ男ぶりや右大臣・藤原兼家(段田安則・66)の凄まじい権力欲は観ていて面白い。人間の美醜を描きやすいのは時代劇共通の強みである。

 とびきりの才女・まひろ(吉高)も絵はド下手というエピソードで笑わせてくれた。ほかにもクスリとさせてくれる場面は多い。世代を問わず楽しめるように趣向が凝らされている。

 半面、気になった点もあった。相次いだ偶然である。第2回、まひろが小石を蹴ると、草履が飛んでしまい、男の頭に当たる。兼家の3男・道長(柄本佑・37)だった。2人は幼い日以来の再会を果たす。

 別の日、まひろが通りを歩いていると、盗賊と間違えられて放免(罪人を捕らえる下級役人)に捕まった男と出くわす。またも道長だった。第3回でも2人は道端でばったり会う。

初回の刺殺事件の賛否

 2人はお互いに運命の人とはいえ、ちょっと偶然が続き過ぎる気がした。どのドラマにも偶然は付き物だが、あまり続いてしまうと、観る側が興ざめしかねない。

 初回では道長の次兄・道兼(玉置玲央・38)が、まひろの母・ちやは(国仲涼子・44)を刺し殺した。この筋書きは賛否が分かれたのではないか。

 まひろと為時の確執の端緒となった事件だから、早めに描こうとしたのだろう。また、まひろと道長の関係を複雑にしそうな出来事でもあるので、やはり序盤で表す必要があると判断したはずだ。

 半面、ちやはのまひろへの教育内容や本人のキャラクターがよく分からぬうちに殺してしまうのは勿体ない気もした。大河は歴史・教養番組ではないから史実に拘る必要はないが、道兼がちやはを殺害したとする史料は存在しない。

低視聴率についてNHKの言い分は

 NHKは視聴率が低いことについて、BSや4Kでも放送していることが理由と説明した。しかし、放送波の数と放送回数(総合での再放送も含めて週5回)は「どうする家康」と同じである。

 また、ネット配信サービス・NHKプラスのUB数(サイトに訪れた人の数)が過去の全ドラマの中で最高の49.8万に達し、これも視聴率が低い背景にあるとも言い添えたが、このサービスは2020年から始まったもので、成長途上の段階なのである。

 NHKプラスへの登録資格を持つ受信契約数は地上波が約4145万件だが、登録数はまだ約401万件(NHK「2023年度第1四半期業務報告」)。ベースとなる登録数が少ない分、現在は右肩上がりで数字が伸びている。おのずとUB数も増えやすい。

「どうする家康」の放送終了時も視聴率の低さを指摘されると、同局側はNHKプラスが過去最高であると強調した。こうも続けてNHKプラスが過去最高であることをPRすると、逆にありがたみが薄くなってしまうのではないか。

 そもそも個人視聴率の1%の視聴者数は全国で約118.5万人。まだ放送とNHKプラスではスケール面で比較にならない。

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