「正直不動産2」は前作を超える仕上がり…民放では観られない“大人向けドラマ”だと思う根拠

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家族の愛憎を描く

 だが、永瀬がストップさせた。不動産問題に強い弁護士の連絡先を直也に教え、同時に「使用貸借契約」の存在をほのめかしたのである。この契約は不動産を無償で貸し借りするもので、書面なしで親族でも成立する。一方、貸主側が契約を解除するには相当の理由が必要となる。

 こんな知識を分かりやすく授けてくれるところもこの作品の魅力。ドラマにしては珍しくテロップでの説明が入るが、違和感を抱かせない。演出が優れている。

 家を売れなくなった寺島は永瀬を憎むが、ここで月下が登場し、妻の美由紀が家を出た真相を明かした。喜助は美由紀を追い出したのではなく、益子市に住む実母の介護をさせるため、家から離れさせたのだ。

「あなたのお父さんは快く送り出したのです」(月下)

 険しかった寺島の顔が途端に穏やかになる。寺島は愛する妻を失い、その理由が喜助にあると誤解していたため、自分を見失っていたのだ。配偶者を失った後の1、2年かそれ以上、平常心でなくなる人は世間にもよくいる。そんなことを知るのも40代、50代以上になってからだろう。

 この仕事を終えた永瀬と月下は満足げだったが、2人と行動を共にした十影は「タイパ(タイムパフォーマンス=費やした時間に対する満足度)悪いわ」と、ぼやく。それを耳にした社長の登坂寿郎(草刈正雄・71)が「そのうち君も分かる」と声を掛けた。

 ここでも十影に共感した世代と登坂に同調した世代に分かれたのではないか。作品としては登坂が正しいことを暗示している。やはり、この作品は大人向けなのである。

“大人向け”を裏付ける視聴率

 視聴率もそれを裏付けている。16日放送の第2回はT層(13~19歳の個人視聴率)が僅か0.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。100人に1人以下しか観ていない。F1層(女性20~34歳の個人視聴率)も同じく0.7%。だが、ミドル層以上を含めた全体値の個人視聴率は3.5%(世帯6.6%)に跳ね上がる。

 全体値の個人視聴率が低いと思う向きもあるだろうが、それでも翌17日のフジテレビ「婚活1000本ノック」(水曜午後10時)の個人1.9%(世帯3.6%)よりは上。ほかのドラマも含め、相対的には決して悪くはない。個人視聴率の標準化から4年近く。もう世帯視聴率でドラマを判断する時代ではない。

 喜劇だから笑わせてくれる場面も数多い。初回。永瀬は十影に顧客回りを頼むが、あっさり断られる。「無理っす。俺、これからランチなんで」。コケにされた永瀬が端正な顔を歪ませたのが愉快だった。昭和期ならこんな光景はあり得ないが、今の時代ならあっても不思議ではない。世の移ろいをあらためて感じさせてくれる。

 出演陣も魅力。主演級がズラリと揃い、しかも適材適所である。山下、草刈、フジオカ、福原、ミネルヴァ不動産社長・鵤聖人役の高橋克典(59)、不動産ブローカー・桐山貴久役の市原隼人(36)、和菓子職人・石田努役の山崎努(87)。制作費が民放より高いNHKだから可能なのだろうが、出演する側はギャラの問題だけでなく、しっかりした作品だから参加するのだろう。

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