元中学校教師、酒豪…女性初、海上自衛隊で「海将」に昇進した近藤奈津枝さんはどんな人か

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「私たちに求められるのは、この国を守り抜くため、精強かつ持続力のある地方隊をつくり上げること」──こう部下に訓示した人物が誰だかお分かりだろうか。正解は、海上自衛隊で最も階級が高い「海将」に女性で初めて昇任した近藤奈津枝氏(57)だ。

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 ちなみに、自衛隊で女性が「将」に昇進したのは、陸将、空将を含め初。青森県むつ市にある海上自衛隊大湊地方総監部の総監となり、昨年12月23日、着任式に臨んだ。

 訓示には冒頭で紹介したもののほかに、「すべての隊員が、日曜日の夜に『月曜日に出勤するのが楽しみで仕方ない』と思える組織こそが結果を出せる」という興味深い言葉もある。

 いずれにしても、それほど自衛隊に詳しくない人でも、「とてつもなく偉い人」というイメージは強いはずだ。担当記者が言う。

「海上自衛隊の“海将”は、諸外国の海軍や旧帝国海軍では“中将”に相当します。例えば、真珠湾攻撃で有名な山本五十六は1934年に海軍中将となりました。そして39年に55歳で連合艦隊司令長官に任命されています。近藤さんは、当時の山本五十六と同じ階級というわけです。海上自衛隊の普通の隊員にとっては、文字通り“神様”のように偉い人です」

 その近藤氏だが、非常にユニークな経歴の持ち主でもある。1966年に山口県で生まれ、大学は地元の国立・山口大学に進んだ。そして卒業すると、中学校の臨時採用教員として国語を教えていたのだ。海上自衛隊の関係者が言う。

最初は看護師

「近藤さんは市役所で自衛官募集のパンフレットを見たのがきっかけで、1989年に海上自衛隊に入隊しました。これまで自衛隊で活躍する女性といえば、92年に防衛大学校に初めて入学した女子学生たちが常に注目を集めてきました。海上自衛隊では、女性として初めて練習艦の艦長になった東良子さん(50)、初めてイージス艦の艦長となった大谷三穂さん(52)といった方々です。近藤さんは彼女らより前の世代で、まさに女性尉官のパイオニアと言っていいでしょう」

 旧帝国海軍が女性に門戸を開くことはなかった。一方、1954年に発足した自衛隊は当初から女性自衛官を採用した。だが、当時の定員17万人のうち女性自衛官は144人。おまけに職種も限定され、全員が看護師だった。

「女性自衛官の草分けは医療関係者」という歴史があるため、自衛隊で初めて将官となった佐伯光(ひかる)氏(80)は海上自衛隊の医官だった。佐伯氏は2000年に自衛隊中央病院リハビリテーション科部長に就任し、翌01年に海将補に昇任。海外の階級だと「海軍少将」になる。

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