「新しい学校のリーダーズ」は令和に革新をもたらすと確信! 制服に込められた“意図”に感動

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 昨年の大みそかに確信した。自分はもう中年ではなく年寄りの域に入った、と。大所帯のグループはほぼ同じ顔に見え、歌もなんつってんだかよく聴きとれず、字幕の歌詞を見ても意味が分からない。そもそもグループ名が読めない。雰囲気日本語の台頭、詰め込み型の歌詞、歌唱力よりダンスや組体操を重視。明らかに歌っていないのにヘッドセットマイクを着けている矛盾。潮ばあちゃん、令和の流行にはようついていけんわ。あ、「紅白歌合戦」の話ね。

 ただし、新しい学校のリーダーズは別格。彼女たちの歌には昭和ムード歌謡のようなコクがあって、踊りには独特のキレがあって、もっと長く観たいと思った。「個性や自由ではみだしていく」のコンセプトも気持ちがいい。たまたま入ったスナックで手練れのチーママに遭遇したような気分だ。

 あとはアバンギャルディな。歌手ではない。おかっぱ頭に制服姿のダンスグループだ。舞台上でがっつり踊らせてほしかったな。どちらも衣装が制服だが、その意図が「人権と若さの搾取」ではなく「個性と才能の強調」。個々の能力がとんでもなく高くて、令和に革新をもたらす存在と確信。

 というわけで令和6年もよろしくお願いします。元日から災害と事故が続き、心穏やかではない新年となった日本列島。三が日は焼酎お湯割りを飲みつつ、昭和を振り返っておりました。

 まず、BS-TBSが満を持して放送した「中森明菜 女神の熱唱~新たな歌声&独占メッセージ」(2日放送)。過去に放送した特番に、現在の明菜のインタビューもあると知り、リアタイ視聴。夫と共に大合唱だった。初期の曲はほぼ覚えていて今でも歌える。明菜が歌ったからこそ、歌詞もメロディーも焼き付いている。

 現在の映像はモノクロで、インタビューは音声のみ。再び歌うことを宣言して「北ウイング-CLASSIC-」を歌った。本来ならば紅白の常連になるべき歌手だったのに、歯車を狂わせた人間や組織の罪の重さに憤りを覚えつつ。で、NHK BS「アイドル誕生 輝け昭和歌謡」(2日)を視聴。昭和歌謡界をけん引した作詞家・阿久悠の物語だ。

 プライドが高くて負けず嫌い、かっこつけで不器用な阿久を演じたのは宇野祥平。阿久のライバルでプロデューサー・酒井政利を演じたのは三浦誠己。常に革新を目指して歌詞を生み出し続けた阿久、才能を見いだし、大胆な売り出し方でスターを育てた酒井。このふたりが熾烈(しれつ)な闘いを繰り広げた70年代の芸能界には、桜田淳子・森昌子・山口百恵の中3トリオ、キャンディーズにピンク・レディーがいた。昔のアイドルには歌唱力があった。歌も引き際も生きざまも含め、70年代の革新は百恵とピンク・レディーだったと思わせた。

 昭和のギラギラした芸能&テレビ業界で、横並びを嫌い、名曲と本物のスターを作ろうと奮闘した人々の熱意。ほぼ全員適役というキャスティングに制作陣の本気度も伝わった。横並びや二番煎じに危機感を覚えた人が昭和にはいた。どうやら令和にもいるようだ。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2024年1月18日号掲載

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