「20歳のときカンヌのカジノでディーラーにウインクされ…」 加賀まりこが語るギャンブル人生

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 芸能界を代表するギャンブラーとして知られる女優の加賀まりこ(80)。60年前、当時20歳の加賀がカンヌのカジノで経験した「忘れらない夜」とは――。

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 ちょうど20歳の頃。私は一人、JALのエコノミークラスでフランスへ飛んだの。初めての海外渡航。1964年5月のことだから、最初の東京五輪が始まる少し前のことね。

 これは単なる旅行じゃなかった。デビューから4年が過ぎ、現場から現場へと撮影をハシゴする毎日で、自分が何の役を演じているのかも分からなくなっていた。「加賀まりこ」というパッケージだけが独り歩きしているのに嫌気が差して、思い切って半年先まで決まっていた仕事を全てキャンセル。「女優なんかやめて転職しよう」と、本気で思っていたの。

 もちろん、いきなり日本から失踪したワケじゃないわよ。名目はちゃんと作ってあった。私も出演していた「乾いた花」がカンヌ映画祭の非公式招待作品に挙がっていたから、これ幸いとばかりにね。

借りたパスポートでカジノへ

 5月のコートダジュールは、心浮き立つ、最高に気持ちのいい気候。映画祭が開かれていたのは10日間ほどだったけど、夜ごと着物に着替えてはパーティーに連れて行ってもらったわ。

 でも、毎晩パーティーばかりじゃつまらない。目ざとい私はある夜、パーティーを抜け出して、街にあった一軒のカジノの扉をたたいたの。当時、フランスのカジノは21歳にならないと入れない。1歳足りなかったけど、38歳の通訳から借りたパスポートを見せたら、すんなり入れてくれた。そういう悪知恵だけは一流だったわね。

 第一関門を突破した私はそのままつかつかとフロアを横切って、ルーレットのテーブルへ。席に着くなり、見よう見まねで11のところにチップを置いたの。私の誕生日が11日だから11。かけたのも5フランだったから、せいぜい千円くらい。

 でも、私がチップを置いた途端、ディーラーがそれを23のところへスイッと動かしてしまった。「一見だからってバカにしやがって!」と思ってにらみつけたら、何を間違ったかそのディーラーが私にウインクをしている。「なんなんだ?」と呆気に取られているうちにルーレットは回り始め、ディーラーは素知らぬ顔でボールを投げ込んだ。すると、不思議なことにボールは綺麗に23のマスに吸い込まれていくじゃないの。驚いたわよ。5フランが36倍だもの。

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