結局「補償」「著作権」はどうなった? 「ジャニーズ問題」2024年も残る4つの課題

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

課題その3 旧ジャニーズ事務所が持つ「知的財産権 」はどうなる?

 旧ジャニーズ事務所の音楽著作権やグッズの商標権などの知的財産権は、スマイル社が継承している。これが被害者への賠償の原資になるが、いずれはスタート社に移すことになるはずだ。そのタイミングはいつになるのか?

 課題その1でも触れたように、補償をめぐってまだ解決すべき問題があるなかで見通しは立てにくい。 さらにはビジネスに大きな影響があるファンクラブの運営はどうなるのかという問題も残る。

課題その4 芸能事務所にテレビが忖度して「干す」芸能界の文化を克服できるのか?

 福田氏がスタート社の社長に就任した背景には、大手芸能事務所を契約問題で退所した後に「干され」ていた俳優のんさんと契約を結ぶなど、タレント自らが仕事を選ぶことができる「エージェント契約」について熟知していることがある。

 福田氏自身、これまで芸能界の大手芸能事務所からの移籍制限や移籍した場合にタレントを「干す」文化があること、旧ジャニーズ事務所にも前近代的な文化があるとメディアなどで指摘していた。「干す」文化は大手芸能事務所とテレビ局の両方の関係性で生まれていく。これをなくすためには大手芸能事務所も「干す」という営業妨害をしないようにするだけでなく、テレビの側も意識改革が必要だ。

「干す」文化に批判的な福田氏がスタート社の社長に就いたことで、旧ジャニーズ事務所を退所したタレントの活動をスタート社が妨害しようとすることは、もはやありえないとは思う。福田氏が自ら率先し大手芸能事務所とテレビ局などとの緊張感ある適切な関係性を構築する見本を作っていく必要がある。

 しかし芸能界全体となると話は別だ。旧ジャニーズ事務所だけの問題ではないからだ。旧ジャニーズがどのように生まれ変わるのかは日本の芸能界全体の試金石になるだろう。

 スマイル社について被害者の補償がある程度まで進み、スタート社の「再発防止」策が定着したことがきちんと確認されない限り、旧ジャニーズ事務所を継承するスタート社の所属タレントと改めて契約する大手スポンサーは現れないだろう。昨年末のNHK紅白歌合戦では“ジャニーズゼロ”が注目されたが、スタート社の所属タレントが同番組に出演するまでには時間がかかることだろう。

 そのためにテレビを含めたメディア自身が、旧ジャニーズ事務所の現状を厳しく検証していくしかない。だが、同時に自己批判も忘れてはならない。テレビ各局は自社でのヒアリングを通じて「反省」はしたものの、旧ジャニーズ事務所の現状をチェックする報道は今回紹介したNHK「クローズアップ現代」やTBS「報道特集」などまだ多いとはいえない。これでは昨年1年間かけて浮かび上がった課題が克服できるかは心もとない。再発防止特別チームが提言した「メディアとの相互監視、相互牽制により人権侵害の再発を防止していく姿勢」は重要だ。

 旧ジャニーズ事務所が生まれ変わることを意識させるスタート社の本格稼働は今年4月に予定されている。

水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。