本当に猫の声? 作家・背筋が語る、愛猫がたまに出すという“様子の違う鳴き声”

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猫に洗脳

 超話題作『近畿地方のある場所について』でデビューした作家・背筋さん。身の毛のよだつ読み味で多くの読者を魅了する著者だが、その自宅では、リビングから「あああああああ」という声が聞こえてくるそうで……

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 わが家にはとてもかわいい猫がいる。サイベリアンというロシア原産の大型長毛種で、3歳の男の子だ。名前はソラ。

 日中は常に同じ部屋で、一段高い位置から私を見下ろしている、寂しがり屋なのか、気位が高いのかわからない、そんな猫だ。諸説あるが、サイベリアンという猫種に共通するといわれている性質が、おしゃべりなことと、遊び好きということ。私が仕事をしていようが、本を読んでいようが、お構いなく、どこからか持ってきたおもちゃを目の前にポトリと落とし、「にゃー」と鳴いて遊びを要求する。その瞬間、全ての作業を中断して、気付けば私はソラのためにおもちゃを操っている。愛情を通り越して半ば彼に洗脳されているような日々を送っている。

様子の違う鳴き方

 そんなソラにひとつだけ勘弁してほしいことがある。夜鳴きだ。私が寝室のベッドで眠りに落ちるタイミングで、いそいそとリビングに移動して、大声で鳴き始める。猫は薄明薄暮性といわれており、明け方と夕方が一番活動的になる。彼のゴールデンタイムが夜更かしな私の就寝時間に近いのである。家に迎えた当初、鳴き続ける彼を心配して構ってしまったのが良くなかったらしい。こいつは呼べばいつでも簡単に来る。彼のなかでそういう認識をされてしまったようだ。

 毎日彼のために起きていては身が持たないため、あえて要求を無視することもある。最初は哀愁漂う「にゃあ……」という声、そのうち「にゃーにゃー」と言外に早く来いよという催促を含んだ声に変わる。そこから先は、私が根負けして起きるか、彼が諦めて私のベッドに潜るかのどちらかだ。だが、たまに、様子の違う鳴き方をすることがある。文字にするのが難しいが、あえて書くならこんな声。

「あああああああ」

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